FG
YZF-R1のFGリアショックをO/H
2000年型のYZF-R1ですが、車体で入庫が有り前後ショックをO/Hと仕様変更を行いました。
リアのFGは当社で造ったダンパーです。余っていた部品を集めて一本仕立てた。という具合にです。
当初は車両の使い方を知りませんでしたが、今回の車両ごと預かる際に「筑波サーキットで速く走れる仕様で」と明確な目標を提示されたので、方向性が定まっている分、設定に悩まずすみました。
まず試乗で感じたのは「なかり良い仕上がり」の車両だという点です。乗っているお客様はセッティング上手です。ただ、ダイアルなどで変更できる範囲でしか合わせこめないので不具合もあります。
そこでフロントはもう少し動き感を出し、リアはバネ定数を上げて腰砕けを解消する。と決めました。
具体的にフロントは0.97Kから10.2Kへ変更。筑波を走るリッターバイクとしては標準的です。そしてリアは9.0Kから9.5Kへ変更。これでイニシャルを調整すればメリハリのある動きが演出できそうです。
明日の天気が良い時に試乗とセットアップを進める予定なので、それは動画とブログで報告いたします。
ZXR250の純正リアショック
ZXR250の純正リアショックをオーバーホールです。
KYBの溶接型ですが、何度でも再利用できるように加工を施してあります。
溶接型をメーカーが用いる意味が理解できないのですが、絶対に分解や破壊されない強度を持つ点や、製造上の価格有利などがあるのでしょうか。
こういったダンパーをO/Hするのは写真をみていただければわかるように、機械加工と部品制作が重なり、決して安価ではありません。ですが2020年代以降は90年代の直列4気筒の車両がかなり高額になっていることもあり、高額なO/H料金と釣り合いが取れるようになってきたと感じております。
O/H料金は概ね8〜9万円です。当社で輸入販売を行っているイタリアのFGで制作すれば16万円程度で高性能なリアショックが手に入るため、クラウドファンディングではありませんが、要望が一定数集まれば企画制作してみようかとも考えております。
NSR250のリアショック
NSR250のリアショックをFGで制作しました。
リザーブタンクなしのFQE11は通常販売を行っており、その価格は167,300円です。
今回はリザーブタンクのあるFQT11を用いてMC18SP様に造り込みました。リザーブタンクの配置が独特なため連結ホースに特殊な品を使っています。
減衰の設定、スプリングレートは5年以上前から細かく造り込んでいますので仕上がりは上々でした。シム組(減衰の設定)は車両ごと預かる場合は、実車合わせの造り込みを再度行います。
オーリンズの場合バネは130Nmですが、当社がFGの場合で設定したのは120Nmです。この違いは減衰、部品の摩擦など複合要素により変わりますので単に並列で比較はできません。
NSR系はスウィングアームとチャンバーの隙間寸法に余裕がないので、車高を上げる場合は当該箇所に加工が必要となります。そも、それほど極端に車高を上げる必要は有りませんが、何らかの事情で車高を変化させたい方は留意してください。
リザーブタンクなしは受注制作となり、お客様ごとの対応となります。現車の状況に応じて細部を調整しますので、単品での販売は行っておりません。ご了承ください。
価格は概ね25~30万円です。
取り付けステーをオリジナルで作り込む場合は、別途費用がかかります。写真のような簡易的な内容で良ければ、取付工賃に含みます。
フルオーバーホール、その定義は様々
当社はどちらかといえば、高価格帯といえる立ち位置です。
その理由は通常のO/Hでも写真の様にほぼ完全に分解するためです。「ほぼ」と付けたのは不要なシリンダーヘッドの分解等は省いてるからです。ここはオイル、ガス漏れが普通は起こりませんので、あえて手を出して余計な費用を発生させないようにしています。
どこまで手を出すのか、省くのかは各会社の姿勢ですから善悪ではなく客様の層や、それぞれの会社の姿勢によると思います。
写真は当社が扱うイタリアのFGです。車種はRG500ガンマ。ロッドの傷みが強く再メッキを施しました。減衰調整のダイアル部分も分解洗浄を行いグリスアップで操作感を気持ちよくしてあります。
減衰を発生するピストンに載るリーフバルブ(板バネ)は一枚一枚丁寧に磨きます。超音波洗浄機だけでは取り切れない汚れを綺麗にします。
質の高い作業、質の高いオイルはダンパーの動きを明らかに良くします。もし少しでも上の何かを求めている方は、一度O/Hをしてみてはいかがでしょうか。
今回のFGは税込みで概ね5万円でした。
GSX-R1000/K1のリアショックFG
昔からの友人が小さな代理店を行っており、当社にO/H依頼を送ってくれます。
今回の依頼はK1のFGです。
FSM11と呼ばれるφ46シリンダーの油圧アジャスターを備えたモノショックで、ツインチューブが主流の現在では普通のリアショックですが、20年ほど前は最高峰の仕組みでした。FGはオイルシールとロッドが頑丈なのでオイル漏れが(イタリアの工場で組み間違えない限りは)少ない事が特徴に挙げられます。
それだけでなく、オイル漏れが起こりづらいオイルシールはただ硬いだけでなく、ロッドのストロークも滑らかな動きを実現するなんとも不思議な感覚です。現在はその謎を解き明かしたのですが、その助けとなってくれたのはメーカー勤務の友人でした。
話はそれましたが、FGの基本特性の良さは現在でもしっかり受け継がれています。今回はロッドの状態も良く研磨だけで再使用が可能となります。エア抜きの穴が開いておらず、旋盤で加工してバキュームポンプで簡単に作業が行えるようにしてあります。ダンパーの仕組み、精度、部品の質は前提条件として大切ですが、最終的にそれらを設計値の通りに動かすためにエア抜きが重要課題となります。
そのためにも前述の加工を行った次第です。
FGに限らずご自分のリアショックを精度高くO/Hを行いたい方は、ぜひ連絡下さい。
今回のO/H料金は送料税込で5万円弱でした。
Dトラッカー125のフロントフォークを改造
名古屋のお客様から預かったDトラッカー125のフロントフォークを改造しました。
左のフォークはスプリングのみで減衰は発生しません。右のフォークはスプリングがなく、減衰を発生させます。
右フォークの減衰発生機構は低価格を種にしているため、簡素な作りです。これを中古品ですが高度な機構へと置換し、セッティングを行いました。純正の簡単なチェックバルブだけの仕組みから、積層弁を用いた現代のフロントフォークとしては一般的な仕組みにしましたが、この利点は狙ったストロークスピードで思い通りの減衰を発生させられる点にあります。
仕様変更も用意で、弁の足し引き、厚み変更、外径の変更などにより多様な乗り味を作り出せます。純正状態はそのような微細な変更はできずオイル粘土に頼るしかない為に、あちらこ立てるとこちらが立たずといった印象の使い勝手が悪いのです。
今回の構造変更は極めて有益でした。モタードらしくフロントの伸び減衰を強め、圧は足し過ぎないように留意し、上手に仕上げられたと感じます。
リアショックはこれも中古のFGで仕立てますが、フルサイズボディー(価格を優先する場合φ36ですが、今回はφ46を採用)による大容量の恩恵を受け、余裕のある動きを作り出せそうです。
試乗は明日の予定です。フロントは突き出ししか調整できませんが、大幅に向上した減衰特性と交換するリアショックでどこまで楽しめる車両にできるのか?明日は勝負の日になりそうです。
SP2のフロントフォークとサスセット
二ヶ月前にリアショックをFGに交換したSP2ですが、フロントフォークのO/Hと仕様変更で再入庫しました。
変更点
変更点はスプリングのイニシャルのみです。純正スプリングレートは1.05kでした。これは少々Vツインには硬いように思います。なぜ純正値がこれほどなのかは推測ですが、イニシャル不足で大きく沈むフロントフォークを支えるためこれほどの値を選んだのではないでしょうか。
イニシャルを適度にするなら、フォークスプリングは0.95K辺りが街乗りからスポーツ走行まで使いやすいと思います。
O/Hはプレミアムラインで作業を進めました。カートリッジ、トップキャップなど分解できる殆どを外し、組み直しています。SP2(SP1も同様に)は部品点数がとても多くかなりの手間がかかります。まさに1日仕事で朝から晩までかかりますが、その分だけ見返りも大きく、組み直した後の動きは極めて滑らかです。
セッティングを向上させるなら前後の均衡を図らねばならない
今回、最初にリアショック、次いでフロントフォークを手直ししました。しかし大きく設定の外れたフロントフォークをそのままにリアショックの作り直しでは良いサスセットは仕上がりませんでした。お客様においても、可能であれば一度に前後の変更を行うように推奨いたします。
SP1/SP2ほどフロントの設定が大きく外れていない、普通の車両では個別の仕様変更も問題ありません。特定の車種において例えばCBR929,954などは前記の前後同時進行が望ましいと考えます。
それで仕上がった車体はどうだったのか?
とても楽しいバイクになりました。減速時のフロントの沈み込みとリアの持ち上がり。車体を倒し込む際の適度に腰の入った沈み込み。自分の足で反復横跳びをするかのような、スッと沈んでグッと踏ん張る感触は極めて気持ちの良いものです。
フロントのイニシャル値は内密ですが、純正は内部で23mm遊んでいます。その遊びをどれほど解消するのかが大切なのですが、硬過ぎる純正スプリングに対し過剰なプリロードは禁物です。トップキャップの調整部分でも10mm以上は追加できるので、程々に抑えることが大切となります。
更に洗練された乗り味を望むなら、フォークスプリングの変更、フォークカートリッジの交換、タイアサイズの変更(6インチリムに180のタイアが私の好み)。予算に余裕があればブレーキ関連とホイール交換もできたら飛び抜けて楽しくなると思います。が、しかし!これらの変更には100万円のお金が必要になりますので、おいそれとは勧められません。
これらの改造は私自身が実践しています。前後ショックの交換は終えましたし、フロントブレーキマスターシリンダーも交換しています。あとは前後ホイールとブレーキキャリパは交換予定です。これら一つ一つをブログや動画にして皆さんに届けたて行きます。それを参考にご自身の改造を企て、できれば当社に依頼下さるとこれ以上の希はございません。
VTR1000SP2のリアショックを追加で仕様変更
先日ブログに記したSP2ですが、リアショックの硬さが解消されませんでした。
そこで仕様変更を行います。純正ショックのバネ定数は10.5Kでした。FGには100Nm(10.2K)を選びましたが、妙に硬い。減衰を伸び圧、共に最弱まで弱めても硬い。これらを踏まえお客様の要望はスプリング交換でしたが、減衰の仕様変更を行うと決めました。
お客様の希望に応えるため、言われた事をそのまま進めるのではなく、希望した行為により得られる結果(この場合、ふんわり柔らかい動きを実現する)を提供するのが最終目標であり、そのためには減衰の仕様変更がそれに叶うと考えました。
果たして狙い通り、減衰の仕様変更で気持ち良いリアショックの動きとなり、作り手としても極めて満足度の高い結果を得られました。
やはり前後ショックの調和が大切
前回の仕様変更はリアショックのみでした。SP2の極めて重要な「フロントフォークの改善」を行う前にリアショックに着手すると、セッティングの明瞭さが現れないため最終的な目標に到達できません。やはりお客様を口説いて、同時に調整するべきでした。
言い訳になるかもしれませんが、私の技術水準では純正フロントフォークの状態では最善の結果は得られませんでした。
このVTR1000SP2は近日試乗を行い、仕上がりとセッティングの方向性を伝えようと思います。