Ferrari(フェラーリ)のショック
フェラーリのショックO/Hの案内
当社ではFerrariのショックO/Hに関しては、お客様から直接の依頼を受け付けておりません。
お近くのフェラーリ修理工場、専門店へ依頼いただき、そちから当社へ送って頂く形を採用しております。
問い合わせや質問には回答いたしますので、ご自分の車種が作業可能かなど疑問がありましたら質問ください。
456GTのBilstein、保証で部品修理
昨年、456GTのビルシュタインをO/H依頼があり、作業を行いました。
この車両のリアショックはステアリングと連動した油圧がかかっており、四輪では稀に見かける仕掛けです。
そしてショックのアッパマウントには調整のためのダイアルがついています。ここからオイル漏れが発生し保証修理で戻って来たので、改めて作業を行った次第です。
当該箇所は純正でとても細くて小さなOリングを使っています。これを改良して組み直しているのですが、当社の工場でガス加圧やオイルを入れての試験では漏れないのに、実車に取り付けて走行すると漏れる。という事で原因が何かを考えました。
しかし考えるだけでは知れない事もあります。車両があるサービス工場まで出向き、状況を確認することで活路が見出せました。
交換したOリングと減衰調整ロッド、調整ダイアルの隙間寸法が加工により変化したので、ダイアルを回転する際にOリングと調整ロッドに隙間が生まれ、オイルが漏れると原因を断定。
それを改善するための部品を製作して、対策しました。
現在、依頼いただいたお店で実走試験を行っており、問題が解消したら、またこのブログで紹介しようと思います。
F430の電制ショック 続き
F430のショックは無事に出荷納品しております。
作業は終わっていますが、ブログは引き続き書いてゆきます。
前回は分解の話をしました。
今回は分解して何をするのか?を話します。
部品の状態を確認し、問題ないのかを調べます。一番大切なのはオイル漏れを起こす最大の要因であるダンパーロッドの状態です。メッキの剥がれ、錆、摩耗に縦筋等が無いのかを調べ、研磨作業等を行います。
インナーシリンダーの摩耗も重要な確認ポイントです。同ダンパーのインナシリンダはアルミ製であり、表面処理が剥がれると急激にシリンダが樽型に広がります。しかし流石世界が認める一流品のフェラーリに採用されるダンパーだけあり、このZFSachsのアルミシリンダーは材料も良い上にコーティングは半端でない硬さです。
母材がアルミなのにここまでしっかりした表面処理はなかなか有りません。そのため、目視による確認でも全くと言えるほど減っていませんでした。こういった部品はエンジンのシリンダーを測定するボアゲージを用いて測定します。
F430のZFSachs分解
F430のザックスですが、作業が進んでおります。
カシメ型(最初の写真で形状を確認してください⚠️写真は後日アップロード予定)なので、通常では再利用不可能です。細かい話をすれば長くなりますんので割愛しますが、寸法も厳しく一度分解すると再利用は極めて難しいのが現実です。
二輪車のリアショックを長く手掛けてきたわけですが、今から5年ほど前になんとかカシメ型を再利用する手立てはないかと、必死に思案して開発したのを発端とし、いくつかの手法を開発しました。
その中でもF430をO/Hする手法は際立って特殊です。まさに企業秘密ですが、普通の手段ではありません(カシメ型のO/H自体が普通ではありませんが)。
かなり難しいのですが、少ない空間の中でオイルシールなどを詰め込むために現物加工(既存の部品に加工を施し再利用可能)を行います。
分解時にはオイル量や部品の採寸など可能な限りの採寸を行い、問題が発生し際に取り返せるように準備を行います。ヨーロッパ車は二輪四輪問わずZFザックスが多く、その中でも電制は同社がかなり進んでいるようなので、採用例がとりわけ多いのです。
二輪のBMWもこれまでにザックスを採用しており(現在はマルゾッキに移行しつつあるようです)、その影響もあり当社ではザックスの電制を数多く手掛けた経験が活きて、F430の電制ショックに手を出せるようになりました。
カシメ型ショックの再利用は、60年代の車両の純正部品を使えるようにするため開発したわけですが、フェラーリにも転用できるのは面白い点でだと感じます。
フェラーリF430純正ショックのアッパーマウント
表題の部分ですが、ブッシュが特殊な形状をしています。
下の写真をご覧頂ければ分かる通り突起が水平垂直では有りません。そのため、考えなしにブッシュを抜くと取り付け時に困った事になります。
写真で記録しておき角度を確認し、取り付け時に問題が発生しないよう十分な下準備が大切です。電子制御の配線もあり、誤った手法ではカプラを破損したり配線内部が断線する可能性も大いにあります。
前回の依頼時にブッシュを抜き取るための治具は制作してありましたので、作業自体は簡単に進みました。以前は工具を造りながら手順を考えてなど、数時間を要しましたが今回はかなり時間短縮でき、経験は重要だと痛感します。その経験を無駄にしないためにも、手順書を事細かに作成しています。
写真と説明文を併せ「初心者でも作業可能」ではなく「手慣れた作業者が手順を知って、無駄な時間を省く」ための手順書としています。それほど簡単なショックではないため、初心者に作業をさせられません。実務経験が数年あり2~3千本は作業をこなした人間でなければ任せられない、案外難しいダンパーなのです。
今回はブッシュ部分だけですが、次回からは少しずつ分解作業を紹介します。
フェラーリ456GTのリアショック
フェラーリの456GT、ビルシュタインのリアショックを作業中です。
調整機構が車内から変更可能で、しかもステアリング系の油圧を用いて車高をあげる事もできる複雑な機構を備えた同ダンパーは、ロッド表面が傷むと交換を余儀なくされ、調整機構が使えなくなります。当社ではロッドを再メッキや新品を自社製造することで、調整機構を残しつつオーバーホール可能にしています。
さすがフェラーリに使うだけあり、アルミシリンダーの質は極めて高いのが特徴です。3流メーカーならあっという間にアルマイトが剥がれ、シリンダー交換となりますが、456GT,355その他マラネロなど傷んだシリンダーを見た事はありません。かなりの期間、持ち堪える様です。アルマイトの硬度や膜圧、それにアルミ自体の材質が良いからこそ可能な所業です。
欧州の一流ダンパーメーカーは凄いと、改めて実感しました。