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ダンパー仕様変更

もう買えないけれど、凄いのです。

 オーリンズのフロントフォーク・カートリッジキットFKRですが、仕様変更を行いました。

 レース専用品のために、現在では街乗り用としては購入できませんがその動きは格別です。

 KYBのフロントフォークに取り付けて動作させましたが、滑らかにヌルッとした感覚です。当然インナーとアウターのみで動かした方が摩擦抵抗は少ないはずなのに、カートリッジを取り付け各種抵抗があるにもかかわらず、良い動きに感じます。

 カートリッジ自体の抵抗は少ないというか、良い具合に調整されている。が正しいようです。しかしそれだけでなくピストン形状に起因する減衰の発生具合、そしてスプリングで加圧されるのも良い面がありそうです。

 ガス加圧は圧力室の容積をどのように設定するのか?もちろんガス圧の初期設定も同様です。

 小さい部屋だと体積変化が大きく、反力の変動が大きい。そのためガスの圧力を落とせば狙った性能に到達しないなどです。

 スプリングは定数が固定されるので、オイルに対する圧力を変更したいならバネ自体を交換するか(調整が可能であればイニシャルを変更する)などの手間隙はあるものの、初期荷重と定数の組み合わせにより意外と自在な設定が作り出せます。

 定価35万円、街乗りでは使えない等の制約もあります。それでもサーキット向けには問題なく販売しているので、二段くらい上の動きを欲するのでしたら、最善の選択になりえます。

 この記事が参考になれば幸いです。

 

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0.6mmの穴

 WPのリアショックを作業しておりましたが、伸びと圧が干渉しないようにする機構が備わっています。

 しかし完全にオイルの流れを止めるのは危険なので逃し穴が空いており、その直径は0.6mmです。大量生産メーカーですから自動機でバンバン加工するのでしょうがそれにしても0.6mmの穴は神経質だと思います。
 その事には敬服しますがこの干渉を省く機構は良いと思いません。

 体感だけの判断ですがこの機構が備わっていても良い点を特に感じませんし、むしろ無い方がセッティングが易いようです。

 

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YZF-R6 2008年型のコンプレッションアジャスタ

 先日、インナーチューブ交換の依頼があり、TOTレーサーのフロントフォークを作業いたしました。

 その車両はフロントフォークに2008年型のR6を用いていますが、このフォークは多機能です。スプリングイニシャル、伸びと圧の低速、高速の両方を調整可能です。写真をご覧になるとわかりますが、写真右の中心部分に青いダイアルがあり、それは低速を調整します。
 その外周にある6角形の金色部品が高速の調整です。

 この部品はネジになっており、回すとスプリングを圧縮しそれが積層板弁に圧力を載せ、開き難くして流路を狭め動きを鈍化させるのです。ただし、この方法は高速のみならず低速にも明らかな影響を強く与えます。
 設定した減衰の強さが、高速の調整で変化するのではどうにもなりません。先日調整ニードルとシムの関係は動画にしていますので、ご覧ください。

 https://youtu.be/8uILs7G523c

 というわけで、件のレーサーはその事を説明して低速のみの調整にしてあります。ピストンは以前に私が設計したオリジナルピストンを使っています。今ではそれほど高性能ではないと認識していますが、14〜15年前に懸命に図面を引き実車で実験した経験が、シムとピストンデザイン、オリフィスとポートの関連性を実感する良い題材となりました。

 リアショックの様にメインピストンと別にセカンダリピストンのシムに対し圧を掛けるのは問題が起こらないようです。
 R6のフロントはメインピストンのシムに圧を掛けるのが宜しくないのです。後年のR6はKYBフォークを採用し、この低速:高速調整をやや違った手法にしてあります。それでも根本構造は同じなため、部品配置の都合上で一体にしなければならぬようで、ならば低速調整のみにした方がセッティングの正確さが損なわれず良いとはずです。

 低速・高速調整あり。とすれば格好は良いと思いますが、実益を優先するのでしたらこの様な削ぎ落とす改造も選択できます。

 

 

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S1000RRの前後ショック

 昨日納車したBMWのS1000RR・2020年型。前後ショックは想定していた通りの作りでした。

 2018年まではザックス製造で分解組み立てが面倒な作りでしたが、特にリアショックはエア抜きが困難であり、好ましく思いませんでしたが現行のマルゾッキは痒い所に手が届く、アフターパーツとして販売されている品のように整備が楽になっています。

 現行S1000RRはフロントのスプリングレートが1.1Kgf/mmで、かなり硬い。バネはイニシャル量(初期の縮める値)とスプリング本来の定数で使い方を選べます。
 S1000RRは硬いバネを柔らかく使おうとしていますが、1.1Kではそれも限界があり、ストロークエンドの重さが際立ちます。他方、リアショックはスプリングが程よい感じで、イニシャルにより狙いどころへ落とし込めます。しかし減衰がよろしくない。ダンパがゆっくり動く際はそれなりに沈むのですが、勢いが強く動く時は踏ん張り過ぎで途端に固まります。

 そのため、フロントはバネを柔らかくしつつ、イニシャル量を見直す(外部調整ではなく内部において)。リアはバネをそのままに圧減衰を大きく弱めます。

 これにより成人男性が乗っても、女性のように比較的体重の軽い場合でもしっかり動きます。これらの改造を専用スプリングを開発し、リアのメニューも定量かし前後ショックの仕様変更で10万円程度で収まるようにしたいと考えています。

 今回は電制サスでない昔ながらのマニュアル調整でしたが、今後は機会があれば電制版も仕様違いを作り込んでみたいと思います。

 

 

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GSX-R1000のBPF

 筑波選手権を走る方の依頼で、少し前のGSX -R1000のSHOWA・BPFを改造しました。

 車両メーカー問わず、問題の多い構造です。

 問題点1 圧減衰の調整方法 これが環状隙間ではなく、板バルブにスプリングで圧をかけるためバイパスポートがオイルロックを起こすとシム側もオイルが通らず本当に硬くなる。
 これを解消するため、ピストンに大きめのバイパスが空いています。オイルロックを防ぐための措置ですが、拡大均衡を求めているようです。

 問題点2 フォーク内部、中身をカートリッジなどが貫通していないため剛性がやや弱く、インナーとアウターが摩耗しやすい。これはカートリッジなしのフリーバルブ型にも共通した話です。が、高性能、高剛性を求めるには無理があります。

 問題点3 減衰を発生させる機構がフォーク上部に集中しており、油面を下げられない。そして減衰を発生するとオイルは泡立つのですが、気泡は上部に集まるのに減衰発生機構も上部にあるため、減衰特性が安定しづらい。

 問題点4 構造上、スプリングをフォーク下部に置かなければならず、重量配分がばね下になってします。フォーク下部は上下動が激しく慣性が強く働く結果になります。BPF以外のカートリッジ型はスプリングを据える場所の自由度が高く、任意の場所へ設置できます。

 良い点1 ピストン径が大きくピストンデザイン、シムの内径、外径の自由度が大きく、設定を微細に作り込みやすい。反面フォークスプリングは1K程度でありこれほどの大容量は不要とも言える。
 しかし容量が多いのはダンパに置いて有益ではある。

 良い点2 ダンパーピストンが特殊工具を持っていれば簡単に外せるので、特性変更にかかる時間が短い。スプリングがフォーク下部にあり、それら部品を外す際に邪魔にならないので、部品点数も少なく極めて簡便である。
 

 現代のフロントフォークに共通する問題点 トップアウトスプリングと主スプリング、それにフォークのストローク量が間違っていると、強く感じています。これはBPFに限らずBFFも同様。KYBのR1やH2等は良い動きをするのでSHOWA特有の問題点でしょう

 BPFはどのようにするのが良いのか?
 上記の良い点、問題点を併せて良い点を引き出す手法を提案するなら、まずはストロークを十分に(120mm)確保します。減衰は最高性能を発揮するのは難しいのですが、先ほど挙げたように特性変更が容易に行えるため、俊敏にダイアルを変更するかのようにシム組を変えて好みの仕様に作り込むのが良いでしょう。

 BPFの問題点はサスセットでは改善すれど解消しません。根本的な解決策はスプリング・減衰系の両方を大きく手直ししなければなりません。無駄な時間を費やすよりも懇意にしているバイク屋さんやサス屋さんに相談してください。

 

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ZX-10Rのフォークスプリングを決めた

 先週分解したZX-10R、2017年型ですがフォークスプリングの値を決めました。

 0.9Kgf/mmを採用するつもりです。一般的には0.9Kは柔らかいのですが、トップアウトスプリングの変更とイニシャル量、それに減衰の設定を組み合わせてムニャっと動く、ストローク初期から程よい反力を感じつつボトム付近でも踏ん張り感よりまだ動きそうな、モトクロッサーやトライアル車のような感触を得られるように作り込みたいと思います。

 動くサスペンションを作るのは簡単です。課題は動く中で要求される耐衝撃性を備えているのか?その点にあります。バネ系と減衰系が高度に調和しなければ作り出せない動きです。ガス加圧された減衰系を持つBF機構ならではの特性を活かして、作り込んでみます。

 

 

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ピストンを造りたい

 技術開発のために、ピストンを造りたいのです。

 最近、友人がシミュレーションで減衰調整ニードル部のオイルにどの様な現象が起きているのかを調べており、その報告を受けました。私の理解力では全てを把握はできませんが、最も重要な課題に関しては解き明かすことが出来たので、今後の減衰設定にはとても有益です。

 先日、動画でピストン/シム系と調整ニードル部分の分担に関して問題にしたオイルロックポイントは、やはり相当程度確信をついており、ならば今後の減衰設定は思うままに進めるのが正解の様です。それはつまり、ピストン/シム系で主要な減衰を発生させ、ニードルは本当に微調整を行う程度が正しい、と言った訳です。

 減衰調整部分の形状はオイルの流れにとても大きな影響を与えます。このニードル形状を細かく追い求めているのはオーリンズのTTxGP以外は今のところ(私の知る限り)は無いようです。このニードル形状も追い求めたいのですが、先ずはピストンから始めたい。なぜなら格好良いからです。やはりこの削り部分の造形は美しい。良質な造形から生み出される上質な減衰を体感したいものです。

 そうなると小型でも良いので、マシニングが欲しくなります。試作品を自社生産できればこれに勝る喜びはありません。おいおい考えてゆきましょう。

 

 

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2017年モデルのZX-10Rフロントフォークを改造中

 表題の通りですが、10Rのフロントフォークを分解しています。

 初代ZX-10RからカワサキのリッターSSのフロントフォークにおける設定は常々疑問を感じていました。

 私には分からない、作り手の課題は数多くあるのでしょうが、私の知る限り2011年位から極端な設定となっています。この年式は減衰の設定が強烈で本当に動きません。
 サーキット向け。と言うのも無理がある位、本当に硬い。その後にフロントフォークがSHOWAのBPFを採用しました。BPFはホンダ、スズキ、カワサキ(その他、海外メーカーにも多く)に採用されましたが必ずと言って良いほど、満足のゆく仕上がりになっていませんでした。構造上の問題から油面を一定の高さより下げられない。
 減衰調整の手法が特殊など種田ねの問題を抱えており、根本の発想は良いのですが、要求性能を全て満足させるのは難しかったようです。余談ですが、トップキャップに伸び圧の減衰を集約していると言うことは、一本で伸びと圧の調整が可能なわけです。そしてもう一本にスプリングの調整を行えるようにすれば、フルアジャスタブルとなり、作り手としては安価に「フルアジャスタブル」と銘打てるためSFF-BP等の名前をつけて高機能と感じさせる商売を行っています。

 ここからが本題 

そして現在のZX-10RはBFF(バランスフリー・フロントフォーク)となりました。何がバランスフリーなのかはSHOWAのサイトをご覧いただければわかると思います。
 簡単に申しますとザックスが初めてオーリンズ、FGなど殆どのレースメーカーが追従したツインチューブタイプです。オイルの流れが良く、ダンパー内部の圧力変化が抑えられるため、強い減衰を安定して長期間発生させられます。

 昨年、一昨年とST1000用にGSX-R1000RのBFFを改造しました。そので得た知見を軸にZX-10Rを分析すると「硬い・動かない」となります。GSX-Rが柔らか過ぎるのではなく、カワサキが硬いのです。

 それは何故断言できるのか?まずスプリングが極めて高い。当社の測定では1.2Kgf/mmでした。レースで使うにも極端な硬さといえます。それを街乗りで用いるのはかなり難しい設定です。
 減衰に関してもレース用に変更したスズキと同等でした。ですから街乗りでは過剰減衰です。

 なぜ間違ったのか?

 私はこのZX-10Rのフロントフォークは間違った設定だと思います。それが正しいと仮定して、何故間違ったのかを考察します。結果から記すと、車高の設定を誤り、それを正す手法もまた間違ったからだと思います。それはどう言う意味か?

 フロントの車高を低く設定「したかった」。または「してしまった」。それを低いままなんとかまとめようとすれば硬めて、動き過ぎないようバネ定数を上げる。そうなるとイニシャル量は自ずと小さくなり、低くて(ストローク量の少ない)動かないフロントの完成です。

 どのような解消方法を考えているのか

 まず低いフロントを持ち上げます。これはトップアウトスプリングで解決する問題です。その次に硬過ぎるバネを交換し、イニシャルを掛けても動く仕様とし、動き出しのメリハリを出しつつ底付き近辺の特性を滑らかにします。
 減衰は少し抜いて、動かす事も硬める事もできるようにシムの設定を見直します。

 ここまで行えばフロントフォークが十分な仕事を行えるようになると同時に、後ろも適切な重量配分になりリアセクションの仕事量も増えます。平たく言えばサスペンションが動くようになる訳です。

 エンジン特性、車体の基本的な設定はとても好感触でした。フロントフォークだけで車両の評価を大きく落としていると感じ、とても勿体ない。上手にセッティングすれば更に高評価を得られるはずなので、楽しみつつより良いセットアップを目指します。

 

 

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HALスプリング測定

 NSR50のクアンタムに使っていたHALスプリングの測定を行いました。

 HALスプリングは近年見かける様になったバネです。埼玉県で製造しているそうですが、会社の歴史など詳細はわかりません。ただ、高品質を謳っているメーカーです。

 実際に測定してみると面白いことに気づきます。反力が最初の1mmから安定しており、その後スプリングを20mm圧縮するまで測定を続けましたが、一定の反力得られ机上の計算通り数字が現れます。なぜこの様な結果になるのか?バネ材が良いなどの理由もあると思いますが、大きな要因は上下の端面にあると睨んでいます。質の悪いバネは測定箇所により自由長が0.5mm程度は当然のように違ってきます。

 しかしこのスプリングはどこで測定してもほぼ一緒で、0.1mmも変わりません。これは素晴らしいと感じます。大手メーカーでもここまで綺麗に揃いません。測定はこの一本だけなので検体を増やせば質の悪い製品を見つけられるかもしれませんが、他メーカーでここまでの質を見たことがない事を鑑みると、全体としてかなり高品質、高精度なのだと感じました。

 機会があれば自分の車両にも使ってみたいと考えています。

 

 

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Dトラッカー125のフロントフォークを改造

 名古屋のお客様から預かったDトラッカー125のフロントフォークを改造しました。

 左のフォークはスプリングのみで減衰は発生しません。右のフォークはスプリングがなく、減衰を発生させます。

 右フォークの減衰発生機構は低価格を種にしているため、簡素な作りです。これを中古品ですが高度な機構へと置換し、セッティングを行いました。純正の簡単なチェックバルブだけの仕組みから、積層弁を用いた現代のフロントフォークとしては一般的な仕組みにしましたが、この利点は狙ったストロークスピードで思い通りの減衰を発生させられる点にあります。
 仕様変更も用意で、弁の足し引き、厚み変更、外径の変更などにより多様な乗り味を作り出せます。純正状態はそのような微細な変更はできずオイル粘土に頼るしかない為に、あちらこ立てるとこちらが立たずといった印象の使い勝手が悪いのです。
 今回の構造変更は極めて有益でした。モタードらしくフロントの伸び減衰を強め、圧は足し過ぎないように留意し、上手に仕上げられたと感じます。

 リアショックはこれも中古のFGで仕立てますが、フルサイズボディー(価格を優先する場合φ36ですが、今回はφ46を採用)による大容量の恩恵を受け、余裕のある動きを作り出せそうです。

 試乗は明日の予定です。フロントは突き出ししか調整できませんが、大幅に向上した減衰特性と交換するリアショックでどこまで楽しめる車両にできるのか?明日は勝負の日になりそうです。

 

 

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