ダンパー仕様変更
憧れの2000年型R1の試乗
10代の後半、バイクに乗り始めて少しして発売されたYZF-R1ですが、これまでに依頼は数多く有りました。
ただ前後ショック、ホイール、ブレーキまで全て交換してある車両は珍しいので、なかなか楽しい作業になりました。それにこの車両はキャブもFCRなので興奮します。
実は一昨年1998年型R1を仕入れたのですが、ほしいと言うお客様がおり自分が乗る前に転売(といっても特別利益を出したわけではありません)したので、自己所有した経験はありません。
といった訳でここからが本題です。フロントフォークはヤフオクで仕入れたそうです。リアのFGは当社で製作しました。
フロントフォークの状態と変更点
分解しシムを洗浄して気づいたのは、圧縮側減衰の左右で設定が違う点です。片側だけ観た印象は「珍しいシム組だな」程度だったのですが、反対を確認して違いが明らかになりました。これはそのままどちらか一方にあわせるのではなく、両者の中間程度の仕様にまとめました。伸びもやや不足気味と感じ小幅ですが追加してあります。
筑波サーキットに狙いを定めるためフロントのバネ10Nmとしてあります。ある程度のタイムまではこの数値で十分だと思います。1分を切るようなら減衰を含めてもう一度見直しが必要です。
リアショック
減衰の設定はそれほど悪くなかったので、主にバネで解決してあります。圧減衰が最強から6段戻しでややきつめでしたが、ばね定数を90Nmから95Nmへ変更してセッティングを重ねると9段目までゆるくなりました。バネの不足分を減衰で誤魔化していたのが本来のあるべき姿に戻ったというところです。
イニシャルは95Nmしたことで、それまでよりも2mmぬいてありますが、程よい感じです。車高、ばね定数、減衰はどれか一つ抜き出して変更するというよりも、全てが重なり合いながら連動するため、調整した際の見極めが重要です。
上手くセットがまとまり、非常に楽しく走れるようになりました。入庫時の状態でもかなり良いと感じましたが、バネ交換により一段上から全体を楽に見渡せるような、気を使わないのに速く走れる感覚です。
ZX-10の前後ショックO/H 単体で依頼
カワサキのZX-10Rですがサーキットも楽しむ方から、前後ショックのO/H依頼がありました。
急ぎという事でサビは研磨で磨いて表面を慣らし、仕上げました。
BPFにハイパープロのバネを組むよう指定がありました。測定の結果では内部の初期プリロードが純正よりも小さくなります。BPFに限った話ではありませんが、トップアウトが硬いこれらの車両でプリロードを低めの値から始めると、実際に使えるストローク量(実ストロークと読んでいます)が減ってしまい、その乗り味は常に前が低く減速でブレーキをかけきれない、消化不良な車両になると予想できます。
BPFをお金をかけずに良い動きにするには、定数の低いバネをプリロード多めで乗れば実ストロークが増え、使えるフォークになります。あとは油面を問題が発生しない範囲で下げてゆく。
もちろん私の好みという面もありますが、基本路線は間違っていないと思いますので、どうにもBPFのセッティングがまとまらない方は、参考にしてください。
リアショックはO/Hと指定のあったアイバッハスプリングへの交換を行いました。こちらもすんなり作業が終わり、納期を急ぐお客様のため早々に出荷いたしました。
前後のO/Hで概ね10万円(送料税込)でした。
YZF-R1のFGリアショックをO/H
2000年型のYZF-R1ですが、車体で入庫が有り前後ショックをO/Hと仕様変更を行いました。
リアのFGは当社で造ったダンパーです。余っていた部品を集めて一本仕立てた。という具合にです。
当初は車両の使い方を知りませんでしたが、今回の車両ごと預かる際に「筑波サーキットで速く走れる仕様で」と明確な目標を提示されたので、方向性が定まっている分、設定に悩まずすみました。
まず試乗で感じたのは「なかり良い仕上がり」の車両だという点です。乗っているお客様はセッティング上手です。ただ、ダイアルなどで変更できる範囲でしか合わせこめないので不具合もあります。
そこでフロントはもう少し動き感を出し、リアはバネ定数を上げて腰砕けを解消する。と決めました。
具体的にフロントは0.97Kから10.2Kへ変更。筑波を走るリッターバイクとしては標準的です。そしてリアは9.0Kから9.5Kへ変更。これでイニシャルを調整すればメリハリのある動きが演出できそうです。
明日の天気が良い時に試乗とセットアップを進める予定なので、それは動画とブログで報告いたします。
アプリリア・RS660のローダウン
アプリリアのRS660をローダウン依頼で前後ショックを預かりました。
前回に続き今回も新車をローダウンしたいとの希望です。特に女性は身長だけでなく体重も軽いので、バイクを操るのは難しい面があります。もちろんコツを掴めば問題はありませんが、コツを知らずとも体格で押し切る男性とは違います。
フロントフォークは30mm下げ、リアは40mm(共にアクスル垂線上での数値)です。フロントは突き出してある程度調整可能なために、ストロークを犠牲にしすぎないよう、リアに対し下げ幅を小さめにしてあります。こうすることで、悪路走破性をあまり犠牲にしないでも良くなります。
前後ショック単体での作業工賃ですが、送料税込別で8万円ほどです。
デイトナ675のリアショックとセッティング
トライアンフ・デイトナ675のリアショックO/Hとスプリング交換が終わりました。動画にまとめましたのでお時間のある方はご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=MneYNyvITL8
リアショックの詳細なデータを採取しましたが、バネがやや硬いようです。
その定数ですが初期は11Kgf/mm程度ですが、ストロークするに従い12.5Kgf/mmまで変化します。イニシャル量も過剰です。純正出荷状態ではセット荷重は125Kを超えます。正直硬すぎて乗れる水準ではありません。
二人乗り、荷物満載ならちょうど良いでしょうがスポーツバイクで一人乗りを主とするならあまりに歪な設定です。
今回はバネを交換し11Kgf/mmとしました。オーリンズのアフターパーツ設定では10.2Kgf/mmなので10〜11Kgf/mm辺りならまとまると思います。
セット荷重は80Kを軸に体格と使い方(乗り方)に併せて調整すれば良さそうです。10.5Kgf/mmか105Nm(10.5K超)のバネが最適にも思います。
減衰力の設定はバネが決まれば悪くなさそうでした。シリンダー内径が40mmとやや小さく貧弱なので最高性能とは言えませんが、うまくまとめれば良い仕事をしそうです。バネ交換に伴いシム組を変更し減衰設定を好みに振れば、価格相当によいリアショックに仕上がると思いますが、ある程度の出費を覚悟するのであれば、社外品への交換の方が良いと思います。
フロントフォークもかなり良い性能を発揮しますが、バネと油面設定を詰めてゆけばまだまだ改善できそうです。
車両として見た場合、並列三気筒は扱いやすいバランスを持っており、トライアンフの675ccは十分なトルクとパワーがあり非常に楽しいと思います。
デイトナ675を試乗
トライアンフのデイトナ675を試乗しました。年式は2012年あたりの型です。
依頼内容はリアショックのO/Hと併せ、リアスプリングの交換を視野に入れた適正化です。
とりあえず純正状態で試乗確認を行いました。ただし大阪のお店でベースセットを出してもらったそうでなので、それを踏まえてセッティングを模索してゆきます。
デイトナに限らずトライアンフのリアショックはプリロード過多により異常なほどリアが動きません。体重80〜90Kgでも動きません。ですからとりあえずはイニシャルを相当量抜いて、動きを演出してゆきます。
ある程度動くようになったら、自分に心地よい領域を探してゆきます。セッティング済みの車両だったので今回はリアを大きく抜く必要がありませんでした。
どちらかというと、リアを抜きすぎて常に後ろ下がりな状態です。特に低速での旋回性はだるく、後ろが低いのでフロントタイアがコーナー内側へと向きを変えません。リアショックは動きすぎるくらいなのに、大きなギャップでやや雑な動きを見せるのは、バネが硬すぎでイニシャルでは対応できないのか、または減衰が強いかです。
次回の試乗でその辺りを詰めて、その後O/Hとバネ交換の方向性を再確認する予定です。
フロントは動いているはわかるのですが、前後ともに動いている感覚を得られづらいので、そこをどのように演出してゆくのかが大きな課題となりそうです。
S1000RRのマルゾッキフロントフォーク 電制
BMWのS1000RRフロントフォーク。マルゾッキになった2019年型以降の品です。
実は外観からは製造会社がZFSachsからMarzocchiに変更があったとはわかりません。ブラケット部分に表記があるためかろうじて認識できる程度です。
昨日のブログでも書いているのですが、内部は想像以上に異なります。例えば電子制御は同じでも従来のピストンにシムが載る構造は伝統的なダンパ構造です。
この仕組みのおかげで、ザックスと違いこのマルゾッキはかなり微細な調整が行えます。さらには加工を施す事でスプリングの調整しかない右フォークに減衰調整を組み込むことも可能です。
ただ、そこまでするなら最初から非電制ショック採用車両を選べば良いので、無用の長物かもしれません。ですが似たようなカテゴリのDucatiのムルティストゥラーダに対して、左電制、右アナログの減衰調整を組み込んで実走させて経験があります。
これは基本の大きな変更を電制側で行い、そこから微妙な調整は右のアナログ調整で行うというものでした。私自身としてはかなり良い仕組みだと思いましたが、作業工賃と部品代が高く一般に売れるような形には仕上げられませんでした。
今後はこのような製品、プロダクトを会社としてどのように提供してゆくのかが、課題だと感じています。
S1000XRのフロントフォークショート加工
BMW/S1000XRのフロントフォークをローダウン加工で作業しています。
サイドスタンドも同時に加工しました。
2019年以降のS1000XRはサイドスタンドが短いので、傾きが大きいのが難点です。傾きが大きいので車両を直立させるために大きな力が必要となり、ローダウンを望まれる(体格が小さな)方にはそれも問題点と感じられるはずです。
そこで当社としては40mmまでのローダウンではサイドスタンドは短くせずそのままにします。そうすることでちょうど良い傾きとなり、むしろ扱いやすさが増します。
費用も抑えられるので、お客様にはシート高で30〜40mm程度のローダウンに留めることで、足つきと価格を両立できるよう提案しています。