2021年10月
マルゾッキのツインショックあれこれ
マルゾッキのツインショックを進めています。
ロッドが傷んでおり再メッキに出荷してその戻り待ちですが、ロッドの話題に乗じていくつか説明します。
マルゾッキは古い品はロッド径がφ9です。かなり細い部類です。年式により若干太いφ10もあります。そして主流(といっても70~80年代の話ですが)はφ12です。ここまでくるとツインショックとして必要最低限は備えている。といった印象を受けます。
写真を載せますが、マルゾッキはロッドとガイドが直接接触をしています。そのためにロッドに傷が入りやすいし耐久性も低いのです。そこでご覧いただいているように、旋盤でロッドガイドを加工してブッシュを圧入し、現代的な仕様へと改めます。これにより耐久性と作動性を確保できますので、O/Hの頻度が下がるし乗り心地もよくなり良いことづくめです。
ですが加工を行う訳ですから金額は高くなります。それでも初回の加工が終われば継続して使用できますため、長期的には負担が減ります。
写真の部品は古い上に鋳造部品のため、旋盤加工によりスアナが顔をのぞかせました。しかもかなりの数があります。古い部品が過剰とも思えるほどの肉厚を有している理由です。
マルゾッキは基本的なO/Hとガイドブッシュ加工にロッド再メッキを含んで概ね12~15万円の価格帯で作業となります。再メッキとガイドブッシュ加工がなければ4~5万円は料金が下がります。
マルゾッキを良くしたい、直したいと思う方は一度相談して下さい。
WPのモノショック
久しぶりにWPモノショックのO/H作業を行いました。
基本的にはWPやMatris、ナイトロンは依頼を断りますが旧知のお客様であると無下に断るわけにもゆきませんので依頼を受けます。
WPに関しては部品供給が安定している点は問題ありませんが当方がWPを得意としていない事もあり、積極的に受け付けていない訳です。それでも今回の個体は2回めの依頼であり前回の責任を引き受ける意味もあり進めました。
古いWPは構成部品が多く、それでいて飛び抜けた性能を有している訳でも無いために、なんだかもったいない気がします。もっと単純に簡単に同じ性能を作り出す事が可能なのは、他社の例を見れば明らかですが「オーリンズの真似は絶対にしない」といったような強固な意思を感じます。
古いダンパのため、エア抜きは機械をつかう前提ではありませんが、アダプタを開発してしっかり作業を行いました。
「WPは硬い」と言われて久しいのですが、それは簡単な理由です。バネか減衰が硬いからです。そのどちらか、または両方を適切にすれば乗り心地の良い普通のショックになりますので、不満を抱えている方は懇意にしているサスペンションショップに相談してみて下さい。
SHOWAの減衰調整ダイアルを作りました。
CBR929RRのフロントフォークをO/Hする際に、伸び減衰の調整ダイアルを折損したので直して欲しいと依頼がありました。
ホンダから部品を取ると欲しい部品単体では入手できないので、不要な部品も含めて高額になってしまうため、ダイアル部分だけを造りました。当該箇所はフロントフォーク改造で度々分解しており、構造は熟知しています。そこで写真のような部品を造りましたが、各部の寸法も問題なく、よい仕上がりとなりました。
この部品の勘所はマイナスドライバの溝切りと、調整部分の長い棒との嵌合部です。旋盤しか持たない当社としては溝切りバイトの咥え方を工夫して、加工を可能にしました。
後者は何度も改造してきたので、ガッチリと嵌り抜けない手法はすでに開発すみでしたから難なく仕上がりました。
この手の部品で悩んでいる方は一度問い合わせください。部品製作と調整棒の組み替え工賃を含めて概ね2万円ほどです。アルマイトを希望される方は別途費用がかかります。
ZXR250のヤフオク、インナーチューブ
ヤフオクで安価に販売しているインナーチューブを見つけることができます。
私もNSR250R用を実際に購入して、検査を行いました。それ程よい品ではありませんが、最低限使える程度の物ではあります。積極的に推奨はしませんが純正部品がなくなり、再メッキをするほどお金を出せないのであれば、手段としては有効です。
それら前提条件はさておき、ZXR250も設定がありまして、今回お客様から持ち込みでの組み付け依頼がありました。
実は数ヶ月前にも同じ依頼があり作業経験がありましたけれど、今回も同様の問題が発生しています。ここで結論となりますが、長さが違うのでそのまま使うと危険な面があります。
実測では22mm以上ヤフオク購入品が長いために、ストロークが14mm使えなくなります。特に重要である工程最後で金属同士の接触があり「ガチン」といった感じで動きが止まります。これは非常に危険な状態です。
そこでインナーチューブを切り、ネジ加工を行うことで純正と同じ長さにし安全に使えるようになりました。
インナーチューブの加工で概ね2万円、ブラケットの組み換え工賃が2.5万円ほどとなります。
学習を続ける
国家試験が終わりました。
現在はファイナンシャルプランナーと簿記三級の学習を始めます。資格が欲しい訳ではなく実益に則した学習ですが、そのついでに資格取得できれば自分の努力の水準がわかるので、目安として受験を考えています。
しかしどのような対象でも常に学習を続けると、思考が洗練されるような気がして気持ち良く感じます。これにはある種の罠も潜んでいますから学習=善とはなりませんが、ほとんどの場合で学ばないよりはずっと良いでしょう。
それもあってサスペンションやジオメトリの学習も細々と進めています。この記事をご覧の皆様も何かしらの専門家であったり、仕事を持っていると思います。
自分の専門分野に限らず門外漢ともいえる分野に踏み出すと、思考の枠が広がりとても有意義なので挑戦してみるのはいかがでしょうか。意外と抱えている問題点が解消できるかもしれません。
自分にとっての価値を考える
カミさんが使う車としてホンダのフリードを購入しました。
知人を通して業者のオークションから仕入れました。車検が1年10ヶ月あって税込27万円です。名義変更などは自分で行います。
状態は距離が15万Km、タイアは交換後一年未満(製造年を確認済)で内外装は年式、距離にしては綺麗です。
名義変更の手間賃や来年かかる自動車税などを省き単純に購入した価格だけで考えると、車検満了まで一月¥12,273となります。新車の車体価格÷1.2万円=17年4ヶ月となります。この単純計算だけでも新車はかなりの金銭を投入すると理解できます。
もちろん新車の心地よさ、満足感、所有欲等はわかります。メーカー保証なども充実しています。それに全てが新品ですから、その車本来の動きを感じ取るにはどうしても新車でなければならない。そのような場合もあります。
しかし新築戸建て(マンションも含め)で言われる「新築プレミアム」と同様に、車にも「新車プレミアム」があります。私は新車には特段の強い興味を持っていないために、中古車でお得に過ごす方が心地よいため、上記のような思考で乗っています。
そうは申しましても、昨年売却したメルセデスのW211は購入価格ー売却価格=−40万円でした。つまりひと月3.3万円以上使っています。この車に求めたのはホイールベース(WB)2850mmを体感してみたい!この一点にありました。さまざまなWBの車に乗ることで自分が欲しているWBを理解できました。その結果はWB2730mm近辺が自分には好ましいと把握できました。
お金の使い方は色々ですが、金銭効率を追求する場合や研究対象など用途によって様々にです。前者の場合はフリードにあたり、後者はメルセデスでした。
まだ子供が幼いのでしばらくはフリードで過ごして、もう少し大きくなったらまたセダン(自分の車はMTにします)を購入しようと思います。
二輪車やサスペンションに関しても同様です。オイル漏れを修理するだけで十分な方や、更なる快楽を求めた探求のためによりお金を注ぎ込む場合。用途に応じて対応しますので使い方を相談ください。主に後者の方が得意ですが、前者に関しても良い提案ができると思います。
マルゾッキツインショックの新品を手直し
町田にあるバイク屋さんから依頼があり、マルゾッキのツインショックを手直しです。
新品で購入されたそうですがオイル漏れが発生したため、その手直し依頼でした。新品ですがロッド研磨を行ってみると表面の荒さに気付きます。打痕があったりと新品としてはいささか疑問を感じる仕上がりです。
それほど酷い状態ではなく研磨修正でなんとかなりました。ロッドはアルミのガイドと直に接触する構造で、これはマルゾッキでは当たり前の仕組みです。カワサキZ1のような旧車のフロントフォークは同様の構造です。そのままではロッドが早期に傷が入り、それがオイルシールを攻撃してオイル漏れを誘発します。その対策としてガイドを削りドライベアリングを圧入して耐久性と作動性を確保します。
これは特別な方法でもなく現代の一般的なフロントフォークやリアショックに用いられています。
これらの加工や修正により古い構造を持つマルゾッキでも、長く安心して使えるようになります。他にもマルゾッキのダンパが何セットか入庫しており、同様の加工を施して出荷します。
部品の入手などでO/Hは費用が高くなる傾向にありますが、一度仕立てれば長く使えますのでO/Hを検討されている方はこれらの加工を視野に入れてみるのはいかがでしょうか。
今回は新品なので最小限の作業ですみましたが、それでも7万円強となりました。ロッドの再メッキ、傷んだ部品を作り直す等が加算されると10万円以上。塗装も行うと20万円の声が聞こえてきます。予算に合わせて対応いたしますので、興味があれば検討ください。
美的感覚を鍛える
何でも型はあるようで、写真にも王道の撮影の仕方があるそうです。
夏休みに九十九里の帰りハーブガーデンというお店に寄りました。食事も美味しかったのですが、食後の甘味も美味しく頂きました。
その日は雨が降ったり止んだりで湿度が高く、しかし夏にしては涼しい1日でした。
料理の撮影方法にはお皿を主役にしたり、料理を主役にしたりと多様な撮影手法があるようで、せっかく得た知識なので試して遊びました。普段はカミさんから写真のセンスがないと叱責されておりますが、この写真は褒めてもらえました。
高校時代には絵を書いてコンクールで入賞した経験があり、写真部にも在籍していたカミさんの言葉は重みがあります。写真よりも絵の方が、実は写真撮影の向上には有益なようです。
小学生以来、あまり絵を描かなくなった私に写真の才能がないのは必然。しかしこれを機に美に対して鋭敏になれば、サスペンションセッティングや操舵性の質感向上を考えると、一番大切なのは数学的な物理法則の探究より文学的な美的感覚でなはなかろうか?とここ数年常々感じております。
それもあり20代前半で読まなくなった文学や哲学・思想に関する本をここ最近は読む機会が増えました。
ZX-6R 636のフロントフォークとリアショック
今年は636の前後ショックを沢山仕様変更しています。
スーパースポーツですが、フロントのスプリングレートが0.9Kgf/mmとやや動きやすいため、先づバネを交換します。そして有効ストロークを減らすトップアウトスプリングを交換したりゴム性のリバウンドストッパへ置換して、使えるストロークを増やします。これだけで車両前部の印象は大幅に良くなります。
リアショックは純正で9.5Kgf/mmで特に硬すぎ柔らかすぎは感じませんが、サーキット等でハードに走りたい方にはやや物足りない様です。これは体重やコースで変わりますが、10〜10.5Kを用います。
これらの仕様変更で峠道からサーキットまでとても楽しく、快適に走れます。価格は前後で概ね15万円程度(フロントはO/H,リアはガスのみ封入)となりますので、リアショックを交換するよりやや安価で済みます。何か不満を抱えている方は、とりあえずこれらの仕様変更から試して、徐々にお金をかけて行くと楽しくなりますので、不満を感じている方は一報ください。
BT1100のシート加工
一年ほど前に茨城県守谷市のK2プロジェクト様に依頼していた、BT1100のシート加工がいよいよ着手すると聴き、嬉しくなっています。
そもなぜシート加工が必要なのか?その理由は二点ほどあります。まずは形状。BTのシートは前端部分が切り立っており、タンク後部にかぶさります。そのせいで体を車両前部に落ち着けないため、旋回初期にリアタイアに不必要な重みがかかります。それを改善したかったのが最大の理由。
次いで座り心地。座り心地はただ柔らかくしたいとか硬くしたいではなく、1日で1000Km以上を走破する際に最大限の疲労低減を目指しています。長距離走を行うとシートの良し悪しはかなり分かる様になります。通常2時間程度は痛みを感じません。しかしそれ以上になってくると1時間おきの休憩が必須となります。安く作られたシートほどその傾向が顕著になります。
K2プロジェクト様の提案するシートの発泡材はそれらが上手く合わさっており、500Km程は痛くならないそうです。実際に当社のお客様で施工した事例があり、私も乗らせて頂きましたが柏から横浜までの距離でもその違いを実感できるほど良い変化を感じ取れました。
完成たらブログと動画で印象を話しますので、楽しみにお待ちください。