2020年5月
オーリンズのFKR、フォークカートリッジ
オーリンズ FKRシリーズの概要
オーリンズのフロントフォークカートリッジKitの最高峰、FKRの格子を解説します。
カートリッジキットは開放型と閉鎖型の二種類に分けられますが、FKRは後者です。キットの内部で減衰機構が完結する訳です。
明日はこのキットの概要を動画にて説明しようと思います。
なぜ滑らかな動きをするのか。減衰の発生機構がこれまでのピストンと違う点。かなり興味深く、なんとか自分の車両にも使いたいと切に願っております。
何が大切なのか、優先順位
フロントフォークの仕組みで優先順位が高いのは、何を置いてもスプリングです。その硬さが一番重要ですが、部品の隙間寸法、それらの摩擦抵抗。結局は全ての合算が大切という、至極当たり前の結論に到達せざるを得ません。しかし、減衰の発生機構だけを取り出すならカートリッジの仕組み次第でサスペンション、車両全体の動きは大幅に変わります。
正直、フォークシステムの中では減衰発生機構は一番最後に変更する点だと認識しておりますが、逆を言えば残された部分はそこしかなく、最後に大きく動きを変えるにはこれの変更がとても効きます。
最近のセイクレッドグランドの傾向
構造体の仕組みをある程度把握できたこの5年ほどは、フォークカートリッジに関する仕事を多く手掛けています。安いキットでも良い品もありますので、ご自分の車両に何かしらの変更を施す予定の方は、当社の動画や実際に問い合わせいただければ、なるべく有益な助言を差し上げるように努めます。下のリンクから飛べますので、是非ご覧ください。
YouTube https://www.youtube.com/channel/UCBGEnN9Nbcal5phO1yt54KA
note https://note.com/sgfacendo/m/m2a3296d570a
クリアランスを詰めたら良くなるか
隙間寸法とカスタムバイク
隙間寸法の設定は難しいです。詰めに詰めるとよくなる訳でもないし、逆もまた然り。
隙間を詰めると部品同士の嵌め合いが難しくなりますから、歩留まり(簡単に言えば不良率)が悪くなります。ですから製品として許せる範囲の中で最大限「広い」隙間を設定し、生産活動(経営、経済合理性)の中で最大限許容できる「狭い」隙間を譲歩します。
隙間設定は作り手の裁量次第です。
能力と行動
今回のお題はブレーキペダルの軸部分です。フロントブレーキレバーとクラッチレバーの経験から、これらの隙間は狭い方が良いと思います。そこで今回は3/100mmの仕上がりとしました。
実際の加工作業
加工を失敗したなら部品を作り直すしかないので、歩留まりは悪くなります。今回、一発で上手く行きましたが、最後は手元のゲージを2/100mm進めて仕上げました。内径15mmから4〜5回は削りました。
難しいのは、細かく刻めば(例えばゴルフでロングコースを刻むように)必ずカップインできる訳ではない点です。つまりピンまで1Mでも外します。ゴルフならダブル、トリプルと何度でも打ち直せますが、加工は削れば元に戻りませんので、また一から部品全体を最初(ゴルフならティーショット、初打)から作り直さなければなりません。
ですから、技術力が伴わなければこのゲームに挑むのは無謀と言えますし、その能力がないなら日々鍛えるしかありません。私は旋盤加工の職人ではありませんが、サスペンションに関する加工のみ日常で鍛えていますので、なんとかこの挑戦に耐える程度に腕を磨いております。
結論。結局、使ったらどうなのか?
頑張って作った結果、どうなのでしょう?
答え 最高です!
非常に滑らかな作動感と、クリアランスの小さい恩恵で時間差のない反応を示します。
カスタムの手直し
ビジネスを含め考える
翻訳の話題で「下手な翻訳を下地に仕上げるよりも、一から自分で全て翻訳した方が楽」と言われるそうです。しかし実際は下翻訳を元に仕上げを行う方が少ない労力で済むようです。
今回の話題はRG500ガンマのカスタム車両です。この車両は明らかに下手な下翻訳がなされていました。寸法が全く合っていなかったり、手作りというより、技術も能力もないお店が(素人)が仕上げた一台と評価せざるを得ない状態でした。
そうは言いつつも下地ができているので、それらを仕立て直すのは労力が少なくてすみます。やはり一から立ち上げるのは大変だと思いますし、その点には敬意を表しますが、しかしお金をもらう仕事しては考えると、その水準には達していないと感じました。
それらの問題点をお客様に伝え、解消するために追加料金で作業を進めました。
大変だけれど
それらを含め、改悪の施されたカスタム車両の手直しを行うビジネスモデルも面白いと考えました。予算に余裕のある方に限られるサービスメニューではありますが、乗り味も含めた良い車両を求める方には、喜んでいただけると思います。
現代の手法
問題のある点は写真をすぐに送れるし、見積もりは電話で口頭やFAXと違い、メッセージにPDFを添付すれば一目瞭然なので、これは現代のIT技術の恩恵です。
あまりテクノロジー頼みもよくないと思いますが、有益な面はしっかり使ってゆきます。
アルミカラーを作り直して、スウィングアームとの当たり面を広くとっています。
旋盤で加工
三菱マテリアルのドリル
本日は、新たな武器(と言えるくらいゴツい)ドリルが届きました。
当社にとっては二番目に太いφ37のドリルです。これを何に使うのかといえば、インナーチューブの内壁を削り取って、軽量化と部品の嵌め合いを調整しました。
もちろん、単に肉厚を薄くするのは危険ですから、車種、車重その他に純正の肉厚を研究し問題の起こらない寸法を導き出しました。
元の内径は36mmで、ドリルは37mm。片肉0.5mmですが、一本目は難なく加工を終え二本目で問題が発生。熱で刃が傷みました。
こんな太いドリルの歯を研ぐのは時間もかかり大事ですが、他に手段もなく頑張ってグラインダで整えました。
その後は慎重に作業を進め無事に終えることができました。
インナーチューブ雑学
インナーチューブは外径が話題に上ることが多く、反面内径に関しては数字が公表されていないので、皆様も意識することが少ないと思います。ですが我々の様な仕事をしていると、スプリングの交換で問題が発生する事も多く、注意しています。
社外のカートリッジキットに交換する場合、現代の高性能品は太くはまらない場合もありますので、気をつけなければなりません。
Mac miniから言語まで
作ってから考える
note https://note.com/sgfacendo/n/n8b92a328328f (有料マガジンの方もよろしくお願いします)にも書いたのですが、Mac mini(出なかったとしてもコンパクトのあPC)を四輪に常備する事で、何か面白くならないか考えています。
二輪、四輪問わず操縦、運転する楽しさは電子機器とは本質的に無関係です。しかし特に四輪においては実際の運用において、スマートフォンやタブレット等、またはそれらのミラーリングが普段使いの利便性を向上させます。
昨年は会社にPCを大量に導入しました。その前段階としてタブレットも活用したのですが、やはりPCとの比較では使い勝手が悪いと感じる面もありました。これは好みもあると思いますが・・・
実際に行動に移すかは別にして、作ってみてからその使い道を考えるのも、また一興という物です。
移動空間の活用
私は電車移動が極めて少ない仕事で、端末の充電に関してほとんど気にしていません。それは車中で常に電源供給があるからです。
であるなら出先で携帯電話、タブレットやラップトップをチマチマいじるよりも、15インチ程度のディスプレイを用意し、入力端末(キーボードなど)を用意すれば、会社にいるのと同様の環境を移動空間に作り出せます。
もちろんラップトップ(ノートPC)でも同様のことは可能ですが、デスクトップPCを常備する事でよりパワフルな作業が安価に可能となる様に思うのです。
ウィンドウズPCを使えば、車両マネジメントを車本体ではなく外部CPU、つまりはパソコンで常に書き換えや変化をもたらす事も可能ではないかと考えます。
私的生活においても
私は地上波TVというのを観ません。映像はほとんどYouTubeやAmazonプライム。音楽もYoutubeプレミアム、AmazonMusic、それにMusic bedを主としています。最近はCDやDVDをほとんど見ません。となれば車においてもプレイヤーを必要とせず、インターネット環境が重要となる訳で、それは携帯端末の小さい画面よりも、大きなディスプレイの方が快適なのです。
間違えない様に気をつける
敬愛する西部邁さんは常日頃から「テクノロジーを疑え」と言ってました。昨年からデジタル製品を活用する私自身も、そこを忘れない様に注意深く生きてゆかなければ、とんでも無い落とし穴が待ち受けているのでは?との疑義を感じています。
人間の本質はテクノロジーでは無い。これも西部さんの言葉を借りれば「人間の本質は言葉である」を思い出します。考えるという行為は言語の上に成り立ち、精神も言語があるからこそ明瞭になる。動物にも感情はありますが、言語が無いためにその色分けは非常に大雑把、または曖昧です。
これは度々言うのですが「赤」と言う色を知っていれば、それの表現は赤で伝わりますが、単語を知らなければ「血、フェラーリ、熟れたリンゴの色」などと曖昧です。ただ「赤」と言う名前を知っていれさえすればとても明瞭になります。全ての事はこの例えと同義だと私は考えています。
まとめ
テクノロジーはとても有益ですが、それを使うのは人間ですし、テクノロジーが何かをしてくれるのではなく、それを生み出した人間が大切なのです。
と言う訳で「人間の本質は言葉」であり「テクノロジーの本質は人間」であると、現状における一応の答えを公言しておきます。
GPZ1100のオーリンズ改造
一品もののオリジナル
茨城県のK2プロジェクト様から依頼があり、カワサキ・GPZ1100のオーリンズを改造しました。
車高調整機能を追加したいとの希望に応えるべく、部品の手配を進めましたが2月の中旬でもコロナ騒動が関係したのか、入手が難しく時間を要しました。
その部品の手配は何とか解決したので、昨日から組み立て作業に入りました。磨耗した鉄シリンダーは現行のアルミへと交換し、長さも変更しています。これは車高調整機能を追加すると、ロッドから下の長さが変わる事に対応するためです。
価格
金額ですが、定価で18万円程です。高いか安いかは皆様の判断に委ねるとして、依頼されたお客様の要望を具現化する事はできました。
今回はモノチューブですが、TTxGPなどを用いて独自のモデルを作ることも可能です。この場合はTTx自体が20万円程なので、車体へのフィッティングも含めると30万円超となりますが、性能と外観はすこぶる魅力的です。
突き抜けたモデルが欲しい方は、是非相談下さい。
ディアルディスプレイ
PCモニター
3月の終わり頃から、社内のディアルディスプレイ化を進めました。
私のiMacにはLGの29インチワイドモニターをおいています。
写真のPCは社員の小野寺君が主に使用しています。2画面にする理由は効率化です。一つの画面を切り替えて見るよりも、新規ウィンドを開きサブディスプレイで確認すれば、かなりの時間短縮となります。
統計では一日8時間程度のPC業務を行う場合、2画面化により2時間以上の短縮が可能になるそうです。写真はレティーナ以前のiMacに1080のDellのモニターです。Googleドライブで仕事をして、簡単な検索業務であればこの画質で十分です。
余談ですがキーボード、マウスともに2を使っています。両者とも初期型より打鍵感やクリック感が気持ちよく、使って楽しいガジェットです。
皆様も2画面にして仕事をしてはいかがでしょうか。
倒立フォークにおけるフルストローク
フルストロークは見た目でわからない
先日作業を終えたZX636のフロントフォークを題材にして、その仕組みを説明します。
多くのロードバイクでは、フロントフォークのストロークは120mmと言われています。実際は計算方法の違いもありますが、110mm以下がほとんどです。
倒立フォークでわかりやすいのですが、ダストシールはブレーキキャリパーなどを取り付けるブラケットに接する事はありません。ほとんどの場合で10〜20mm程度離れた所が機械的なフルストロークとなります。例外的にBMWのS1000RRなどは接する「程」近づきます。
どの様に測定するのか?
一番沈んだボトム位置を測定する時は、スプリングを外し一番押し込み測ります。一番沈み込むとオイルロックピースかバンプラバーの二種類の方法で、衝撃を和らげる機構があり、普通はそこまで押し込めません。そのため、バネを外し反発をなくす事で測定が可能となります。
実際
実際に本当の意味でのボトムを知る事が必ずしも意味を持つわけではありません。各々の使い方や走行条件で「自分にとってのフルボトム」を知っていれば十分です。
ただし、オーバーホールの際にその値を知る事は難しくないため、興味のある方は要望くだされば確かな数値を明示致しますので、申し付けください。
宣伝
https://note.com/sgfacendo/m/m2a3296d570a1
noteでZX636のバンプタッチまでの数値を公開していますので、登録して読んでくださると嬉しく思います。