ホーム>SACRED GROUND STAFF BLOG>2019年10月

2019年10月

見積もりで3時間

 本日の午前中は、大きな案件の見積もりのために3時間を要しました。

 これまでにも作業経験のある品でしたが、より高い精度の作業を提供するために多くの工程を追加し、公差を1000分台に収めるための加工方法などを考えておりました。

 もちろん、精度を高めれば歩留まりが悪くなりますし、その分だけ価格が上がってしまいます。今年に入り高付加なサービスを目的に色々な事を試していますが、今回の提案(見積もり)はそれを極めたような内容です。

 お客様から見積もり了承の返事を頂けましたら、詳しく書き記しますので、楽しみにお待ちください。

カシメ型ダンパーのオーバーホール

 先日、ホンダCB400F/NC36のリアショック をオーバーホール致しました。

 実はこのCB400Fは400ccクラスではかなり好きな形のバイクなんです。昔は何が格好良いのかと思いましたが、おっさんになった今では、とても魅力的に見えます。これを前後サス改造で作り込んだら、最高に面白いバイクに仕上げられる事請け合いです。
 純正の様な4本だしマフラーのまま、細部を煮詰めてゆけば、非常にエレガントな車両になりそうです。

 と言った個人的な思いとは別に、リアショックについて説明いたします。
 当社がこのカシメ型をオーバーホールするに至った経緯は、3〜4年前に同じCB400Fのリアショックを依頼いただき、納期が迫る中にでどうすれば良いかを数日間の熟考の末、ブレイクスルーとも言える手法を編み出しました。
 この時はオイルの番手、量、作業方法など全てが手探りでしたが、数をこなしながらデータの蓄積、作業練度の向上、さらなる技術向上が積み重なり、今となっては精度の高いオーバーホールが可能となっています。

 ここから発展し、カワサキのZやWシリーズ、ホンダもジェイドやゼルビス、その他の旧車。その技術は四輪のカシメ型ダンパーにも飛び火し、ポルシェやベンツのダンパーにおいてもオーバーホールが可能となっています。

 ロッドの再メッキや新規製作がなければ、初回は税抜きで9.5万円程です。安くはありませんが、特に旧車においては代わりのない当時物を新品の様にリフレッシュできますので、その価値は十分にあります。オイルが漏れた状態では車両販売もままなりませんので、販売業者様においてもオーバーホールの利用価値は高いと思います。

 カシメ型ダンパーのオーバーホール先駆者として、今後も更に精度の高いオーバーホールに挑戦してゆきます。

 

 2019109102459.JPG2019109102753.JPG2019109102817.JPG2019109102843.JPG201910910297.JPG2019109102944.JPG201910910307.JPG2019109103038.JPG

毎日の作業

 今週はガンマ500の前後ショック改造、VFR400Rを色々と改造が車体で入っており、そして通常のフロントフォーク、リアショック の作業があります。

 今年に入りクアンタムやワークスパフォーマンス等の、ちょっと変わり種が増えたように思います。昨日はカワサキの750SSの方がお越し下さり、コニーのリアサスやフロントフォークの質問がありました。

 クアンタムの当社は正規店ではないため、部品を加工してオーバーホールを可能にしています。

 ワークスパフォーマンスはここのところ、代理店のPMC様が頑張ってくださり、多くの部品を在庫されているようです。そのおかげで、これまで自社制作していた部品が純正供給となり、これまでよりも安価で早く対応できるようになりました。

 過去に作業したBMWのステアリングダンパーも、ちょっとした問題を抱えていたので、分解せずに解消できる問題であったため、ささっと手直ししました。

 VFR400Rのリアショックもメンテナンスを施し、リザーブタンクはありませんが、当然エア抜きは機械できっちりと行います。

 他にはVFR800のサイドスタンドをショート加工し、ヤマハのMT-10のアルミサイドスタンドも同様に作業いたしました。

 先週末にZ1100Rのフロントフォークが作業を終えました。こちらはスタンダードラインで作業を進め、再メッキも施しました。フロントフォークは近年依頼が増えきました。これまでは一般のバイクショップでも個人でも、自分でメンテナンスが可能である点を考え、熱心に営業を行って来ませんでした。ですが、ある切っ掛けから自社のフロントフォークO/Hの質感が極めて上質だと気付き、その点を強調しながら営業を始めました。
 価格面だけで考えれば、当社はかなり高額な部類(約3万円〜)の工賃ですが、リアショックで得た知見を元にした作業を心掛けています。

 車体セッティングにおいては同業の友人と話す中で、彼が提案してくれた「ロードコンタクトテクノロジー(RCT)」を念頭においています。このRCTは名前が示す通り「テクノロジー」ですから、主に技術を指します。つまり理念やコンセプトにはなり得ません。どういう事かと説明すると、タイアと路面が常に適切な荷重の元に接する技術(RCT)、これと同時に上屋(シャーシ)を水平を保ったように「感じられる」セッティングを行い、サスペンションはよく動くのにフラット感のある穏やかな車両を仕上げるのが、理想の仕上がりです。これをスポーツラグジュアリーやラグジュアリースポーツと評しています。このフラット感のある乗り味が当社の車両作りにおけるコンセプトです。

 二輪、四輪、他にも図面から部品製作を行ったり、自社企画の独自部品も考えています。慌てず一つ一つ形にしてまいります。

 

 2019108114718.JPG2019108114835.JPG2019108114859.JPG2019108114953.JPG2019108115019.JPG2019108115040.JPG

嬉しい総合優勝

 九州のオートポリスで行われたJP250の全日本選手権を手伝いに行ってきました。

 水曜日の朝、足立区にあるキジマさんの会社へ行き、丸一日以上かけてオートポリスへ到着しました。道中、キジマのツイッターの中の人と仕事、思想、哲学に教育など多岐にわたる話をして、新たな考え方を吸収する良い時間を得られました。

 木曜日は天気が良ければ練習走行を予定していましたが、雨、強風、濃霧でとても走れるような状況ではありませんでした。
 従って、走行は金曜日からとなりました。金曜の一本目は早朝ということもあり、雨は止んでいましたが路面はまだまだ湿っていました。とりあえず感触を見るために走り、タイアもドライタイアでタイム云々を論じるような状況でもありません。

 2本目はしっかり晴れて、やっとまともな走行ができました。ここで、前回の練習走行とタイムが変わらないどころか、コンマ数秒遅く2分11秒半ばと正直とてもレースにはならないタイムに、チームとして考えを改なければいけませんでした。
 以下に問題点を列挙します。

 1 ジェットコースターを下りきった右60Rを超え、上りの始まる右90Rから先でリアが高い気がする。
 2 それによりアクセルを開け曲がってゆく場面(いわゆる二次旋回)において、バイクが曲がらない。アクセルを開けても蹴り出し(前に進む力)が弱い。
 3 バイクに機敏性がなく、どちらかと言えばモッサイ(重ったるい)バイクであり、切り返しなどで向きがえがきつい。

 上記三点を分析してゆきます。
 1のリアが高いですが、その時のセットを考えると、「プリロードは緩いのにリアが高い」と感じています。これは動的姿勢(ダイナミック)ではなく静的姿勢(スタティック)が高い証拠です。そこで、車高を下げる提案をしました。

 2の二次旋回において向きが変わらない、においては、リアが高くアクセルを開けた際にまだ一次旋回の続きをしているため、リアに荷重が掛かり難くそのためアクセルを開けても内向性が高まらない。ここではアクセルを開けてリアに荷重が乗りやすくするため、リアの車高を下げる提案をしました。それとアクセル開で素早く加速に移る姿勢を作るため、リアのプリロードをかける提案も同時にします。

 3の機敏性がなく重ったるいバイクには、プリロードをかけ反応を高める提案を行いました。

 1〜3の問題点を合わせた結果は、プリロードをかけ(ダイナミックバランスにおいて)反応をあげ問題2を解消し、上がってしまう車高に対して車高調整(スタティックバランス)で下げ、1の問題点も解消します。これを行えば3の問題は自然と解消します。

 上記のように、ライダーのコメントを解析し現実と照らし合わせ、一つ一つの変更点がどのような効果を生み出し、どこが重なり合うか(オーバーラップ)を考えて総合的な変更量を決定します。この度はイニシャル量を1回転(1.5mm)締め、車高を1回転(1.25mm)下げ対処しました。
 この変更で予選は2分9秒前半と2秒以上も短縮に成功し、総合4番手、クラス2位の予選順位を得られました。

 

 決勝に向けて

 予選では好感触でしたがライダーはまだ若干リアが高いとの印象を持っていました。そのコメントを基にどうやってリアを下げるのか検討します。
 かなり好感触ではあるが、先述のジェットコースター先の連続する右コーナーでリアの高さを訴えるのに、良い部分を殺さず下げる方法は無いものかと思案していました。
「イニシャルを抜いて下げつつ、伸び減衰も弱めリアの反応を保つ」や「車高をただ下げる」などがパッと思い浮かぶのですが、せっかく良いバランスを崩すのが怖い。テストであれば試せることが、本番直前にそこまで変更するのかは、少なくからず危険性を伴います。
 そこまで考え、パッと思い浮かんだのは圧減衰(コンプレッション)を抜く手法です。直進次はほとんど影響がないはずのコンプレッションですが、現実はほんの少しではありますが、リアは下がります。しかも倒し込みではより深く下がるようになり、全てを殺さずに問題を解決できそうです。

 これらの提案は全て担当メカニックであるファイアーガレージの飯高さんを通して、変更を施します。そこで飯高さんと直前まで相談したところ、変更なしでゆくと飯高さんが決断しました。結果はナショナルライセンスながら、インター勢を抑え総合優勝を果たしました。
 しかも最後の二周で先頭に出てからは、譲ることなくチェッカーフラッグを受け、ピットにいた私を含む四人は大はしゃぎとなりました。

 エンジンパワーでは不利とされるヤマハのR25で、登り傾斜がきつくホンダトラックと言えそうなオートポリスでの優勝は、ライダーを褒められると思います。そう言えば、ホンダトラックと言われていたホッケンハイムでも、意外にホンダが勝てなかったのを思い出しました。
 この優勝で、最終戦にノーポイントで終わったとしてもポイントランキング2位のライダーと同ポイント、優勝回数により松岡玲選手のシリーズチャンピオンが決定しました(はずです)。正式アナウンスを待たなければいけませんが、二年連続のチャンピオン獲得は、チームの方向性が正しいことを証明しつつ、FGの性能も立証させてもらいました。全日本では少数派のFGですが、これまでのデータを基にライダーに合わせ個別に作り上げてきた結果が出たのだと思います。
 これに慢心することなく、常に最善を模索してゆきます。

 このように、JP250でもライダー、メカニック、チーム関係者の思考と葛藤が一台のバイクを作り上げ、レースを走っています。今週末の筑波選手権では56レーシングの二台が走ります。そこでもまた、新たな発見や葛藤があるかと思いますが、それもまた楽しみにしています。

 

 20191071580.jpg201910715954.jpg2019107151014.jpg2019107151030.jpg201910715123.jpg

 

 

 

キジマの凝った造りのバックステップ

KissレーシングのR25を眺めていたら、ちょっとしたことに気付きました。

バックステップが位置調整機能を持つ、キジマのレース用オリジナルですが、ベースプレートが段付きの一枚物です。
これを造るには、厚みのある大きな材料から削るために、材料代も加工費用も高くつきます。しかし軽量性や剛性を考え手の込んだ造とする辺りに、製作者の強い意図がしっかりと感じ取れます。

簡単に済ませるなら、選択肢はふた通りです。
一つは、平板のベースプレートを一枚とし、そこに位置可変のステッププレートを取り付けます。
簡単に早く出来ますが、ステップの幅が広くなるのが問題となります。この幅が広がると、案外操作性に大きな影響を与えますので、極力避けたいポイントです。

次の手段は、プレートを二枚に分割し、ボルトにより締結する手法です。これなら材料も小さくすみ工数も若干抑えられます。しかし、結合剛性の問題とボルトの重量もかさむので、次善策の域を出ません。

ここに一枚ものでプレートを造る心意気がご理解頂けましたでしょうか?

2019104162416.jpeg

九州へ

数年ぶりに九州の地を踏んでおります。

レースサポートを行っているキジマKissレーシングに帯同するためです。

オートポリスの有名な濃霧を眺め初日は終わりましたが、二日目は好天に恵まれ、無事に一本目の走行を終えています。
ライダーの松岡選手との打ち合わせも終え、2本目のタイム次第で再度セットアップの方向性を確認します。

サスペンションに限りませんが、次に起こるであろう問題点を仮定しておき、今のうちから対応策を練っています。

201910411446.jpeg

VFR400R/NC30

 リアの17インチ化を進めるVFR400Rのメンテナンス準備を行いました。

 プロアーム車両の整備はリアスタンドが課題ですが、これまではちょっとした部品で誤魔化しながら作業していました。
しかし、今回はしっかりした部品を作り対応する事に決め、そのように致しました。FGの片持ちリアスタンドにアルミの変換カラーを作り、綺麗に持ち上がるようにします。

 アルミカラーの削り出しは、アルバイトの中村に任せます。彼は工業高校出身なので旋盤はまるっきりの初心者ではありません。ですが常に触り続けていたわけではない為、一つ一つに時間がかかります。私が自分で作れば30分も掛からないと思いますが、それではいつまで経っても彼は成長できません。彼は結局、測定から完成まで3時間近くを要しました。アルバイトとは言え社員が成長するのは会社の成長と同義ですから、少しの時間を惜しむよりも今後の事を考えました。

 少し前にも削りを任せたのですが、その時は削り過ぎて材料を無駄にし、時間もなかったので外注に出す事になってしまいました。これは想定していた事なので、うまくできたら運が良い程度に考えていました。

 今回の部品は単純な竹輪型のカラーですから、しっかりとした手順を踏めば問題なく完成するだろうと考えていました。実際その通りに時間はかかりましたが、満足できる品になりました。このように一つ一つ問題を解決し、上手く行くことで自信を養い、また失敗し叱られながら次の仕事を任せて行くのが人材育成です。
 この考え方は落合博満さんの影響かもしれません。任せ失敗したら私が責任をとる。上手く行けば褒めるのではなく、新たな仕事を任せる。

 最近の若者は叱るとヘソを曲げたり、拗ねたりすると言いますが、当社で今も働いてくれている若者たちはそのような気配はありません。私が課す作業を失敗し問題を抱え怒られながらも、上を目指して頑張ってくれます。
 退社した中には若者もお年寄りもいますが、彼らは私の仕事の手法が合わなかったのかもしれません。時にはもう少し優しく接すればよかったのかと(刹那と言うべき一瞬だけ)思うこともありますが、合う合わないは生き方の問題もあるので、今では「仕方ないかな」とクヨクヨ考えずにおります。

 たった一つの部品を作るだけで、多くの事に気づく1日でした。

 

 201910123330.JPG20191012350.JPG

ラリー用ショックの考察

 こんにちは。アルバイトの金岡です。


 今回は、私が考えるラリーに求められるサスペンションの要素についてお話しします。
 

 ラリーでは主としてグラベル、ターマック、スノーを走ります。

グラベルでは、砂利道を走る訳ですので、あまり硬すぎず、接地性を高めるためにストロークのあるサスペンションが求められます。

硬くないと言っても、日本車の純正ショックのようなただ柔らかいという感覚では車が暴れてしまい、車をコントロールすることが難しくなってしまいます。
 私個人のイメージとしては、圧を緩くして伸びを強めることで、衝撃を吸収したあと姿勢の急激な変化を抑えるという感覚です。

また、砂利道と言っても硬い砂利道やぬかるんだ砂利道など路面の質は多種多様ですので、ちょうど良いセッティングを見つけ出すことが重要になってきます。また、狙ったセッティング通りの動きをしてくれるサスペンションが必要です。

 

 ターマックでも、舗装路とは言え走る道が林道という特性上、路面のギャップ、アンジュレーション(路面のうねり)は一般に走る道路よりも激しいものとなります。そのため、基本的にはグラベルと同じ考え方ですが、ストロークが長く、柔らかいとロールが増え、応答性が低下するためストーロークを短くし、硬いサスペンションにします。


 私が今乗っているシビックは、リアのサスペンションストロークが短く、バンピーな路面だとリアが暴れるのがネックですが、これからテストや実践を重ねてより良い動きになるようにして行きたいと思います。

 

 

 2019101202633.jpg

ページ上部へ