2019年4月
FZ1フェザーの試乗記
昨日は日中の天気も良く、試乗を行うには絶好の日和でした。
前後サスペンション、タイア、ブレーキパッド、エンジンオイル、スプロケットを整備した車両は別格の乗り味でした。
一番驚いたのはサスペンションの懐の深さです。セットを取り切れていない状態にも関わらず、狙ったスプリングレート、減衰のボリュームがかなり良い所にあり、オーリンズのFGKカートリッジキットは良い摩擦抵抗を生み出し(低摩擦という意味ではない)、大径化されたピストンは十分な容量がありNIXと呼ばれる構造でも十分な減衰を上品に生み出します。
リアにはトップアウトスプリングの採用は見送りましたが、ばね定数をオーリンズの出荷状態120Nmから110Nmへと交換した上で、イニシャルも少し抜きました。
今後に動画であげる予定ですが、サイドスタンドをかけた状態からお越しあげると、自重でサスが沈み込みます。これにより、フワッとした柔ながらしっかり踏ん張る車体に仕上げられます。
税抜きで79万円掛かりました。格別な質感を持ち、かつ高級車と呼んでも差し支え無仕上に、私自身も非常に大きな満足を覚えました。
試乗頂いたお客様も大幅に変化した乗り味に喜んで頂けました。
FZ1フェザーが完成しました。
一月に依頼を頂いたFZ1フェザーがようやく完成の域に達しました。
実際の作業は一週間程度で終えましたが、構想と部品の手配に時間を要しました。
この車両を改造するにあたり、大きな壁となったのはフロントフォークでした。過去に他社で仕様変更が行われており、私共に依頼を頂くにあたり、一度実際にセッティングを変更して乗って頂いた上で、当社が信頼に足るか判断してもらいました。
今回の一番大きな作業はフロントフォークです。ZX-10Rのインナーチューブを流用し、DLCを使っています。DLCは動きが良くなるわけではありませんが、長持ちするので長期的な費用を抑えるためには極めて有効だと思います。
オーリンズのFGKと呼ばれるカートリッジキットを取り付けるにあたり、長さ、ネジ寸法、減衰の値、ストローク長など多岐に渡り問題を解消しなければならず、非常に高くつきましたが純正では得られない作動性を手に入れました。なぜFGのキットを選ばなかったといえば、リアはすでにオーリンズが取り付けられており、バイク一台を俯瞰した際により筋の通った(整合性の高い)仕様にしたかった事がオーリンズのフォークキットを選んだ理由です。
スプリングレート、減衰の値、使うグリスに表面処理により、走り出す以前、組んだ段階で既に期待値の高いフロントフォークとなりました。
反面、リアは車高調整機能を追加し、市販品にはない仕様を作り出しました。ピストンはモノチューブの最終型で少し外径の大きなシムを使っています。10枚以上重なり合っていましたが、枚数を抑える方向で設定し、その動きはやはり期待の持てる良い動きをしています。
この一台はタイア交換なども含め80万円かかりましたが、これまで作って来た車両の中でも際立った仕上がりを見せています。明日の実走による最終仕上げが楽しみです。
櫻井芽依さん(とお父さん)現る!
昨日、56レーシングを卒業し昨年からKISSレーシングのライダーとして走る櫻井芽依さんが、お父さんと共にお越しくださいました。
整備を行った車両の引き上げに来て頂きましたが、全日本もてぎでの印象を確認し、セッティングに関してはかなり良い状態になって来たと確信するに至りました。ライダーが感じ取る印象とセッティングを行うエンジニア、遠隔ですがデータロガーの動きを確認しライダーとエンジニアの意見をまとめる私と、役割が綺麗に分担され、良いティームになったと思います。
まだ一戦を走っただけですし楽観視はしておりませんが、櫻井芽依さんと一緒に仕事を始めて7年、やっと安定して速いタイムが出せるようになって来たような気がします。次戦の菅生へ向け残された時間は多くありませんが、効率良くレースウィークへ臨むつもりです。
甘いものが好きな私のために、訪れるたびラスクを差し入れしてくれますが今回も頂きました。
お客様がミニバイクレースで優勝
先日、オーリンズのTTX・NSRmini用のオーバーホールを行いました。
プレミアムラインと呼んでいる作業工賃が¥55、700の依頼でした。他社では一般に¥20、000円前後なので、約260%の価格差があります。しかし、本日連絡がありミニバイクのレースで優勝したそうです。その情報をもたらして下さったのは、56レーシングのライダーとして御馴染みの埜口遥希さんのお父さんでした。
このオーリンズ・プレミアムラインオーバーホールの依頼を下さったお客様は、埜口遥希さんのミニバイクの師匠だそうで、そのような方が「オーバーホール後は動きが良くなった」と感動していたそうです。とても高い料金を頂いていますのでかなり細かい部分まで確認し、とにかく滑らかに動くように心がけて組んでいます。
契約の都合上、全ての部品とオイルはオーリンズの品を用いて作業を進めます。エア抜きは少しでもエアの混入が疑われる場合は、何度でも機械を回します。調整ダイアルやスプリングアジャスターの作動感にも徹底的に注意を払ってあります。
こちらのお客様へ納品時には間に合いませんでしたが、プレミアムライン専用封筒、礼状、測定結果表などの準備も整い、連休明けにはお客様の元に発送しようと考えています。
とても高価な作業ですが、56レーシングをサポートする中で掴んだ勘所を、基準化し業務に落とし込んだのがプレミアムライン・オーバーホールです。予算の許す方はぜひ一度体感いただければ幸いです。
プレミアムライン・オーバーホールを超える
FZ1フェザーのサスペンションを主にして、全体のプロディースを任させて頂きました。
フロントフォークはインナーチューブに傷みがあり交換となりました。乗り味を変えるために仕様変更も行いますが、ただ変えるだけではつまらないため、オーリンズのカートリッジキットを加工し、組み付けます。
リアショックは最新版のオーリンズでしたが車高調整を追加、シム組を変更して、スプリングレートも変えます。
ブレーキパッドも私の考える理想の動きを追求するべく、好みのメーカーを選びます。
今回は単なる仕様変更やセッティングに留まらずバイクの基本コンセプトの設定まで任され、正にプロデュースを行うといった内容です。オーバーホール+セッティングを超えた質感をお客様に感じてもらいたいと思い、制作にあたっています。
昨年からCB1300SF、CB1000R、1199パニガーレ、NSR250R、H2、ZX-10R等、多くの車両を依頼いただいています。連休中はFGを製作しXJ400、ハーレー、CBR400F、R1-Z等を仕上げてまいります。
MacでIT化。狙いは?
当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
今月に入り、ちょっとした切っ掛けからMacのパソコンを購入しました。自分の作業台の後ろに設置して、常に触れる環境を構築したところ、納期・見積もり担当の小野寺との連帯がとても楽になり、これは急いで全ての作業台に導入が必要だと判断して、急ぎ3台追加し合計4台のMacで全ての作業台をつないでいます。
当社はフロントフォークとリアショックを分解組立のみ行う第一工場と、入荷、バネ外し洗浄、組み立て後出荷準備を行う第二工場に分かれており、その行き来だけでかなりの時間を費やしていました。そこで、パソコンを使う事により面倒を省き、大幅な時間短縮を狙っています。
それだけでなく、作業手順書をこれまでのタブレットでなくパソコンに切り替えたところ、反応速度の向上により待ち時間が減り作業者の負担も軽減させられます。更には各作業者が会社のドライブに常時アクセスし、作業手順書を随時更新しアップデートをも容易にします。
当社は作業者が予定表通りただ作業するのでなく、例えアルバイトであったとしても「自ら考え自ら動く」人材を育成し、強力な集団を作りたいと考えています。
よその会社さんには余計なお世話かもしれませんが、デスクトップのパソコンを一人一台与えるだけで、工場であろうと作業効率は大幅に改善し、社長様やティームのヘッドが思い描く動き方を実現できると感じましたので、このブログから少しでも着想を得て下さると嬉しく感じます。
満足を得るために
本日の朝、当社が独自に制作を依頼した封筒、クリアファイルが届きました。
先日の段ボールも同様ですが、お客様の手元に届いた品がデザインされた段ボールから出された瞬間、美しい封筒を認めるところを想像して製作しました。もちろん、ダンパー本体の機能、品質が担保されているのは当然としたうえです。
濃紺の封筒はプレミアムラインのオーバーホールを依頼くださったお客様へ宛てた書類を入れるのに使います。表面に「per il cliente speciale」とあり、特別なお客様へという意味のイタリア語です。
裏面には当社の社名と併せ「da Kashiwa」と記し、柏の地を強調しています。柏はバイク乗りからすればなんの特色もない土地ではありますが、当社の近くは軽く流すには楽しい道と、筑波サーキットやツインリンクもてぎ、茂原ツインサーキットへも近く意外とバイク乗りにとっては都合の良い土地柄です。
他方、灰色の封筒は用途を問わずに、当社から発行する書類のほとんどをこれに入れる予定です。これは再生紙を使用したライナーグレー封筒という名の品ですが、価格は安いそうです。ですが、私が提供したい価値は「価格が高いから良い」ではなく、「原価が安くても良い物に価値を持たせ、価値に見合った価格」を払いたいと言うのが本音です。
全ての納品物において私が関わったのはデザイン面のみで、業者の選定から発注まで含め、全て梅山が主となり小野寺と話し合い進めてくれました。以前の当社ならばダンパーに関する作業以外のほぼ全てを私が動き決めていました。今はなるべく自分の手から離すように心がけており、それに答えて社員が良く動いてくれとても助かっています。
SHOWAのフロントフォーク、部品を作りました。
TOTに出る方のフロントフォークを作業中です。
ショーワのフロントフォークで、CBR929や954、ドカティの916系やモンスターにムルティストラーダ、スズキのVJ23ガンマ、カワサキの初期型Z1000などに用いられているフロントフォークは、スプリングカラーの一部に樹脂部品を使っています。これが試用期間によるものか使用方法なのかは不明ですが、度々割れているのを見かけます。
そのまま使い続ければプラスティックが割れてしまい、そのカスがカートリッジに入り込み減衰をおかしくするだけでなく、トップキャップとスプリングカラーの位置がずれたりすれば、どのような問題に発展するわかりません。
そこで、写真のようにアルミで作り直しました。性能が良くなるわけでなく品質保証の部類ではありますが、ライダーが不安なく走れるのが一番優先されるべき事だとの認識から、しっかりした製品を届けるべく自作しています。
価格は二つで¥10,000です。必要な方は連絡ください。
デザインした段ボールが届きました。
お客様に喜んで頂くため、これまでとは色々な部分を変える努力をしています。
ステッカーに続く第二弾は段ボールです。クリアファイルで擦った揉んだしたデザインを、段ボールにも取り入れましたが、それがいよいよ届きました。
箱の寸法もリアショックを入れるのに丁度良い大きさで、5mm圧の硬い材質を選びました。それはケチって安い材料にすると、お客様が再利用するときにフニャフニャした感触が不安になってしまうのと、梅雨時の湿気で簡単にフニャフニャになるのを知っているからです。
逆にあまりに頑丈にして、二層の8mmなどを選ぶと箱が閉じずらくなり、梱包が面倒になります。総合的に判断し、5mm厚の硬い材料が最善となりました。これらの発注は全て梅山が担当し、デザイン以外の一切を任せています。私は細か見積もりを要求し、相見積もりをとるような事はいたしません。第一に品質を優先し、次に納期、最後に価格で選びます。
このデザイン段ボールも、寸法の種類を徐々に増やしてお客様の使い勝手をよくして行こうと思います。
ボールペンと使い心地と質感
私も今年40歳を迎えるにあたり、考えることも多くなりました。
当社の一貫した信念は、お客様が楽しんでいただける車両を創り充実した時間を過ごせるようにする事です。その為には自分自身が良いものを知らなければ話になりませんから、試せるものはなるべく手を出して、実際に体感するよう心がけています。
今日は会社で使うボールペンが届きました。それほど高い品では有りませんが、パーカーを選びました。
用があり早速書いてみました。千円少々のペンですが、書いている時の手触りがかなり違います。巷に溢れているペンは、減衰の効いていないダンパーの様です。動き出してからボトムまで一気に動いて、中間域の存在を感じさせません。反面、パーカーのペンは良いショックの様に動き出しが「スッ」と始まり書いている最中はシットリとした手応えで、止めの作業も思いのままです。
いつかは万年筆も買うつもりなのですが、その前に、暫くはボールペンを試し自分に合った物を楽しみながら探してみるつもりです。