2018年5月
Porsche 911 Carrera2 996
水冷911のカレラ2を試乗しました。
これほど完成度の高い車を、瞬時に分析するのは中々難しい作業でしたが、それでも幾つかの事が分かりました。
ハンドル操作が重いなどパッと乗って分かる事を除き、車両運動とサスペンションの動きに焦点を合わせ分析してみました。
全体の乗り味は非常にまろやかです。硬いか柔らかいかで表現するなら柔らかいサスペンションです。ただ柔らかいのではなく、動くべきところと踏ん張る必要のあるところを、それぞれ上手に色分けできています。
ABSが効くほどブレーキをグッと踏んでみましたが、その動きはバイクのフロントフォークと同様の感触です。たっぷりストロークがあり、十分な手応えを感じます。ストロークが多くバネを含めたダンパーの設定も良いせいで、タイアのロック寸前がつかみやすいと感じました。
その使いやすいブレーキで切っ掛けを作りコーナーへ入ってゆきますが、RRならではの車の動きは特徴的でした。リアを軸に、フロントが内向する(当たり前ですが)FFとは逆の感覚です。ロールを上手く使い、フロントを潜り込ませるように鼻先をインに向けてゆきます。バイクで言うならホンダの乗り味に近いと思います。これは両者とも、リアのグリップは絶対に抜かないという強い意志があると推測します。少し前のRS125や現行のNSF250Rも近いハンドリングだと思います。
車全体のボディー剛性は、たぶん極めて高いと思うのですが、その分ダンパー込みのサスペンション全体にサスペンションとしての仕事を全うさせられるため、役割分担が明確に出来るのでしょう。この点は、やはり二輪車も同様です。フロントフォークは言い換えればストラット、リアはマルチリンクやダブルウィッシュボーンと同様だからです。特にフロントフォークは結合部にブッシュなどのゴム系が入らないため、ブレーキング時のダイレクト感は四輪車を圧倒的に上回ります。リアもゴムブッシュを介在させる車種はそれほど多くないため、ちょっとしたスポーツモデルならフェッラーリやポルシェと同等のスポーツ性を有します。そこまでは良いのですが、二輪車の問題はフロントフォークとダンパーの設定を詰め切れていないために、楽しさが半減しています。もしくは万人向けという名の中途半端なセッティングで、最後の最後までバイクを仕上げる事を拒否したその姿勢です。車は数の力と高価格が可能なため、細部の造り込みはかなり高い水準で完成されています。しかし、それだけでなく良い乗り物を造る意思があるのだと感じます。二輪車に同様の造り込みをするならば、当社では30~50万円は頂いています。逆に言えば、それだけ掛ければ、フェッラーリやポルシェと同質の乗り物に出来るという事です。
ここ最近、色々な車の乗り味を確かめてみました。特にポルシェの振動やピッチングに関する造りは驚く程、緻密に大雑把に造ってありました。この表現はオキシモロンのようですが、私が理想とする乗り味の、到達点の第一ステージと言えそうです。
追記 フロントのトランク(ボンネット?)の締めが甘かったようです。このあとグッと押し込みしっかり締めました。
ポルシェを動かす
911カレラ2を駐車場だけですが動かしました。
普通の車と違いスポーツカーというのが少し動かしただけでも分かります。天気が良くなったら近所を少し走り、抜けなどの確認を行ったうえで、オーバーホールに取り掛かる予定です。乗車感覚と内部のシム組を比較し、今後の方向性を探ります。
鈴鹿のフルコース優勝
56レーシングの梶山採千夏さんが、鈴鹿サンデーロードレースで優勝致しました。
フルコースの優勝はやはり嬉しいです。しかも彼女は鈴鹿のレースが初で、初優勝。素晴らしい結果でした。当社の大槻もチーフメカニックの後田さん(ガレージアトラクティブ)と共に同行し、レースサポートを行いました。
サスセットは全く変更しなかったようですが、大槻が手伝うと優勝する確率が高い気がしているので、今後も積極的にサーキットの現場へ派遣するつもりです。
梶山さんは茂原のティーム練習の時に初めて見ましたが、こんなに早く優勝するとは思いませんでした。昨年から56レーシングは優勝回数が増え、非常に良い流れに乗っています。今後もその手助けになれるように、張り切って仕事をします。
トライアンフ・スピードトリプル1050
近所にお住いの方が、トライアンフ・スピードトリプルの前後サスペンションを、オーバーホールに持ち込んで下さいました。
依頼は通常のオーバーホール作業で、セッティングもそのままで良いと言われたのですが、預かった車両をそのまま出荷するほど素直でないため、結局セットを少し変更しました。
フロントはプリロードを少し増し、伸び圧の減衰を半回転抜きました。リアはイニシャルを半回転抜き、伸び減衰を増し、圧は抜き車高も下げました。全ての値はそれほど大きく変えていませんが、これだけで車両の運動性は驚く程変わります。大きく変えたのは油面を77mmから160mmに落とした点です。
タイアの空気圧も時期を考慮し、前後とも2.3キロにしました。
試乗後にお客様へ以前の状態と今回の変更点を具体的に説明し、理解頂きました。ブレーキングの安定感と接地感の高さに満足頂けたようです。
フロントは純正のショーワ、リアはナイトロン。前後の脱着工賃や消費税も含め、税込み¥120,800でした。他社と比較し割と高額な工賃を頂いておりますが、もちろん内容に見合った作業をしております。上記のセッティング変更や試乗後の説明も含め、バイクがより楽しくなるように全ての物事を考えています。この車両の持ち主の方は、セッティングが素晴らしく決まったのでトライアンフディーラーへ見せに行くと仰ってくださいました。
セッティングだけの作業も依頼を受け付けていますので、興味のある方は問い合わせください。