2017年5月
Z1100R
Z1100Rのリアサスをオバーホールしました。
伺った話では、親戚の方がカナダ出張中に購入し、それを譲り受けたそうです。Z1100RのリアサスはショーワとKYBの2種類を見たことがあります。これはKYBでしたが、ヨシムラカヤバと同じ作りをしている、初めて見るKYBでした。
通常ブラダですが、これはフリーピストンでした。トップアウトスプリングも備え、純正採用のKYBとはかなり違います。ただ、ピストン周りの構造は全く同一です。
シールヘッド、ロッドともに新造して12.5mmから14mmへと太くして、耐久性と作動性を向上させています。脱着工賃も含めると11万円以上と高額でしたが、お客様は大変喜んで下さり、作り手としてもうれしく思います。
遊びで直しました。
依頼頂いているカワサキZ1100Rのダンパーのメンテナンスを終えました。それと別に、クラッチの基部にあるスイッチが壊れ、クラッチレバーを握ってもセルフスターターが回らない故障を抱えていたので、同時に修理を行いました。
分解したところ、スイッチの先端にあるプラスティックの棒状部品が折損したことで、握っても反応しなくなっていました。折れた面を修正し、段付き棒を造り内部に仕込み、試したところ問題なくスターターが回りました。
安い部品なので買っても良いのですが、試しに直してみました。こういう遊びは構造を理解し、造る技術を高めるので普段扱うダンパーとは違った種類なので、楽しく思います。逆に趣味でバイクを整備していた時は、このような事ばかりしていたのを、ふと思い出しました。
製品を考えて楽しむ
NSF250Rのフロントフォーク入っている、鉄系の材料から造られたスプリングカラーを見て、楽しんでいました。
材料は価格と手間を考え、パイプだと思います。内径も切削痕があったので、多少手間がかかっています。なぜ削る必要があるかは不明ですが、ダンパーを組む方法によっては、部品を通さなければいけないので、そのため精度を欲したのかも知れません。
帽子型(T型)のカラーですが、段差を削り最後に突っ切りで落として終わりの様です。仕上げ面が写真で分かるように、かなり荒れていました。他方はそれほど荒れていませんでした。寸法はマイクロメーターで測定して、同一でした。
ワンチャックで加工するなら、面取りはどのようにしているか不明です。マシニングでつかみ直しているかもしれませんが、そう考えるとこんな小さなカラーを造るのに、数千万円もする機械が動くのかと思うと、無駄な気がします。しかし、人件費を抑えるのなら、それが本筋なのでしょう。
このような小さな部品一つでも、その背景を読み解くと中々楽しい時間を過ごせますが、仕事が進まないので、この辺りで終わりにします。
NSF250R、メンテナンス
久しぶりに56Design sport の話です。
来週の筑波選手権に向け、ダンパーのメンテナンスを行いました。レース直前にメタル関連を交換すると、この手のレース車両では問題が起こる可能性もある為、今回はオイル交換だけを行いました。そうは申しましても、ライダーの体格に合わせスプリングを交換してあります。黄色いバネはオーリンズです。使わない在庫があったので、余計な出費を控えるために寸法変換用のカラーを造り、対応しました。本当はFGのスプリングが良かったのですが、丁度良い品がありませんでした。とほほ。
オイル交換だけのメンテナンスとはいえ、枯れている可能性があるのでオイルシールにグリスを塗り、潤滑を図ります。
ステアリングダンパーは前回の走行で、監督がオイル漏れを発見して下さり、試しにオイルシールを交換して再利用してみました。チームが新品を用意しているので、本番はそちらを使用します。規則に抵触して失格になるのも怖いので、練習用に割り切り作業を行いました。
しかし、今回のステアリングダンパーのシール交換で感じましたが、過去の経験は大切です。先日「沢山の仕事をこなしているから、そこも依頼のポイントになる」と言ってくださる方が居ました。自分では分かりませんでしたが、今年に入り作業したGSX-R1100のステアリングダンパー2セットが、このNSFのステダンに活きています。過去の仕事を土台にして、更に難しい仕事に取り組めるのですね。逆に13年前に開業した際は、経験も少ない若造を信用して仕事を下さった、気前の良いお客様に感謝しかありません。
来週の筑波選手権が楽しみです。
人とくるまのテクノロジー展
今日は5時に出社しました。家を出たのは、4:30ですから、このところ毎朝ニッポン放送のあさぼらけを聴く毎日です。
9時前には納品に向かい、江戸川区と横浜へ向かい、途中連絡があり相模原で品物を引き取り、そこからパスィフィコ横浜で催されている「人とくるまのテクノロジー展」行ってきました。車が平仮名になっている点に、センスの無さを感じますが、とりあえずそこはみなかったことにします。
モーターサイクルショーなどと違い、技術者の為の展示会なので実益重視で、むしろ楽しかったです。
日本発条ことニッパツでは、現在車両メーカーから求められることと、工学的な問題の確認ができ、気になる話も聴けました。基本的にメーカーから求められた品を提供すると仰っていました。それは面白みの少ない仕事だと思います。もっと深く聞いて、車の理念、目指す到達点を共通認識にして、相手から煩いと思われるくらいに提案した方が良いのではないかと考えます。少なくとも私ならそうします。この様な仕事の方法が大企業同士の通例ならば、その改善により今ある製品はもっと、格段に良くなるのではないでしょうか。しかし、面倒で時間のかかる手法ですから、株主と利益の最大化を優先する仕事の方法では、無理な話なのでしょうか。
ショーワでは以前から気になていたBPFの問題点は、技術者のかたに直接質問をぶつけ、納得できる話を聴けました。
NGKはNTKと言う別部門があり、切削用のチップやバイトを造っていて興味のあるチップを発見したので、そこでも話を伺いカタログを送ってもらえる事になりました。
ドライベアリングの大同メタルでは、メタルとロッドのクリアランスについて、製造側の意向を確認できたため、今後のロッドガイドの作り方に良い影響がありそうです。
生産技術、材料、新し技術に昔からある技術だけれど、知らない事も沢山あり、やはり多くの人と話をしたり、見たりするのはとても大切だと感じた時間でした。
設備投資
旋盤購入は大きな当社にとっては、設備投資でした。
それに伴う細々した物は、価格面から設備投資にはなりませんが、内実は投資です。
今回は長穴加工の手間を省くため、フリーハンドエアブローを購入しました。ドリルの抜き差しの度にエアガンを手に取り、キリコを吹き飛ばすのは回数を重ねると、かなり時間を取られます。
そのほか穴の入り口に吹き付け、キリコを排出する手法も試しています。キリコが詰まらず、空冷で冷却するためドリル、工作物ともに温度が低く抑えられ精度の確保も容易になります。
アッサブの完成バイトも用意しました。大きな物は価格が跳ね上がるので、先ずは8mmと10mm角であまり突き出さないで良い物を造ります。R溝を作る総形バイトか、R面取り用から始めてみます。8mm角は小径の穴繰りバイトにするつもりです。
アウターチューブのブッシュ加工
ZX-12Rのガイドブッシュはアウターチューブに固定された「固定勘合」型です。オーリンズなど多くのメーカーが採用しています。
可変勘合と言う他の方式もありますが、国内メーカーで固定勘合は珍しい方だと思います。長所はそれぞれです。
今回預かった12Rのアウターは、オイルシール側にあるガイドブッシュの縦寸法8mmを、12mmか15mmが嵌るように改造するためです。その分の肉厚は十分にあり、実は以前にも行ったことのある加工です。低速での大入力と、300km/h近い速度からのハードブレーキにも耐えたので、強度にも問題ありません。
90年代中盤以降のKYBのフォークはこの手の8mmブッシュが多く採用されていて、良し悪しがあるのは知っていますが、全体を見回すと12mm位はあった方が良いのかと思います。
圧入後のガイドブッシュ内径とインナーチューブの外径を測定し、一般的な隙間より多いようです。通常は43mmのインナーチューブの場合、両者の隙間は10/100mm程度ですが、預かった品は15/100mmありました。