2017年2月
CB750K0のリアサスペンションをオーバーホール
CB750K0のリアサスペンションが、オーバーホールで入荷しました。
以前作業したCB450やCB92,CB72などでも同様の形状を採用しており、作業経験があるため、比較的すんなりと作業を進められそうです。このような50年近く前の車両ですが、ダンパーはガスを封入したエマルジョン型です。同時期はツインチューブの非加圧型(KONIやMarzocchiに代表される)が一般的でしたので、かなり特殊だったと想像できます。
今回はオイル漏れの修理だけですが、完全オリジナルにこだわらなければもう少し性能を上げられので、興味ある方は連絡ください。完全な純正にこだわる方には、内部のオイルシール関連以外はオリジナルを保持した作業も可能です。
VT250 SPADA
筑波サーキットを走るお客様から依頼頂いたFGが完成しました。
VT250スパーダ用です。価格と性能の均衡を考えFQE11を勧めました。理由は46mmシリンダー、トップアウトスプリング、エア抜き穴のあるフリーピストンを採用している点に代表されます。
以前にも埼玉のバイク屋ZERO様に依頼され製作したため、内部のシム組などは把握していので、納期は掛かりましたが、製作にはそれほど時間を要しませんでした。リザーブタンクを備えたFQTシリーズも製作可能ですが、タンクの配置は個別対応致します。
FGはパイオリを基に独自部品を盛り込み、自社製品として販売していますが、細部には小規模な会社らしい仕上げの甘さがあります。ロッドの写真に見える、オイル通路の口周辺の面取りがされておらず、スライドメタルやシールが組み込み時に傷みます。その個所をこちらで仕上げ加工を施し、足りない部品は当社で製作し、更に品質を上げます。そのため、価格は張りますが、ご自分だけの一品物になりますので、仕上がりを楽しみに買っていただけると嬉しく思います。
楽しいバイクを造る為に
ドカテイのモンスター400を調整しました。
調整機構はリアのイニシャルだけしか動かせないので、フォークのイニシャルを掛けるためにMCナイロンでカラーを製作しました。13~15mmが狙いどころだと思いましたが、乗り手と使い方を考慮して10mmとしました。
試乗した感触はフォークの動きが極めて速いので、本質的にばね定数を上げると同時にダンパーを効かせる必要がありますが、変更点を最小限にとどめるにはカラー追加が一番安価に済みます。
モンスターは車格も丁度良く、乗り味が楽しいと思います。初期型の900モンスターを所有していた身としては、少々思い入れのある車です。しかし、400はタイアサイズや車重、トルクなどを考えると600ccは欲しい気がします。それならもっと楽しくなりそうです。
旋盤のアダプターとチャックの芯出しを行ったので、ブレもなくなり綺麗に仕上がりました。チップも先端のRを0.2と0.4それに0.8を試し場面によって使い分けます。基礎的な機械加工の知識がないので、実践から学んでいます。
ホーネット250
埼玉県にあるホンダドリーム店様から、ホーネット250のリアサスペンション・オーバーホール依頼がありました。
税抜きの価格は¥45,000でした。これにはガスバルブの増設、エア抜き用のアダプタ接続口の増設、バンプラバー、ピストンリング交換、ガイドブッシュ交換、Oリングやシール類の全てを交換しています。
それにしても純正の新品は4万円強なので、わざわざ中古品のオーバーホールを選択したエンドユーザー様には敬服致します。
ショップ店員様には新品は価格の安さ、外観の美しさ、シリンダーの摩耗がない、納期が2日程度早いなどの良い点を伝え、オーバーホールは質の高いオイルとエア抜きを機械で行えるという、2点が大きなメリットだと伝えました。
依頼主の方は若い方だと伺いましたし、一般的に中古品を高い値段で修理するよりも新品の方がメーカー保証など安心感が高いと思うのですが、店員さんの勧めと自分のバイクを少しでも良い物に仕上げたいという愛情もあったのだと思いますが、オーバーホールを選んでくださいました。非常に光栄に思い、作業を行った次第です。
BT1100bulldogのFG
私も乗っている、イタリアヤマハのBT1100bulldogのリアダンパーが届きました。
FGのFQE11のサスペンション交換は、形状が同じなので難なく行えます。ノーマルのイニシャル調整だけと比較して、車高調整に伸び減衰の調整がついています。これにより、車両のキャラクターを大きく変えられるので、より好みへと近づけます。車体パッケージを考える際は、イニシャル調整と伸び減衰の調整があれば大抵事足ります。欲を言えば車高調整があると、更に微細な領域へ入っていけます。
定価¥99,000と同クラスでは比較的高めの値段設定ですが「安くて良い」ではなく、「高いけどとても良い」を目指した製品なので、きっと満足いただけると思います。その際に車両を持ち込みセカンダリデザインを体験してもらえれば、より楽しいバイクにできます。時間を都合してでも是非お越しください。
普通の人でも理解できる
先週の土曜日に入車したCB1300SF・SC54ですが、持ち主の方は一般的なライダーでした。
本人が仰るには街乗りとツーリングが主で、稀にサーキットを走る。サスペンションのダイアル等は触ったことがない。などサスペンションに対する造詣が深いとは、到底言えない方でした。
いらした時の車体はフロントがとてもしっかりした感触で、リアはパッパッと動き前後のサスペンションはちぐはぐでした。リアをFGに交換しいくらかセットを変更した後で、リアサスがだいぶまとまった為、フロントフォークの変更を施そうと数値を確認したところ、伸び減衰のダイアルは最強でした。このCBのフォークは伸びを変更すると圧も同時に変化しますが、最強付近ではその変化量も顕著です。
そこでダイアルを一回転抜き伸びも圧も抜くことで、軽やかな動きを演出してバイクが「グゥー」や「パッ」ではなく「スイー」と動くようになりました。セッティングに必要なのは、個々のダイアルをどのように動かすかではなく、どのようなバイクを造りたいか、です。同じCBでも街乗りだけか、峠道を楽しく走りたいのか、サーキットを主にするのかで、車体の仕上げ方が変わってきます。従って自分の使い方をしっかり認識したうえで、変更を施せば動きがしっかり理解できるようになります。
仕上がったCBは交差点で安心して曲がれ、コーナーも安定して走る、信頼感と安心感のある車に仕上がりました。ここで持ち主の方に試乗した感想をもらいましたが、「交差点でタイアが路面から離れない感覚があり、他の場面でも乗りやすく、違いがしっかり分かる」との事でした。
このように明瞭なコンセプトを車体にしっかり落とし込めば、自分は良くわからないと思っている方でも、変化を感じ取る事できると考えています。今回はその良い事例となりました。ダンパーにも良し悪しがあり、FGはとても良い品だと思いますが、純正でもほかのメーカーでも乗り味に対する明確な指針を持てば、好みに仕上げるのは可能です。
当社の車体パッケージにおけるデザインを感じて頂き、ご自身のバイクライフに活かしてもらえれば幸いです。