2016年4月
いつも思うこと
TZR250,3MAのリアダンパーが完成し、取り付けも行いあとは試乗で乗り味を決めていきます。
新しく依頼を受けるたびに思うことがあります。新しい乗り味や価値観を少しでも取り入れ、楽しい車を造りたいのです。
以前の、ダンパーや発条のどちらかに重きを置いた設定から、両者の調和を図った造りに移行し、現在はダンパーよりも、車両の動き方をどのように演出するかを考えています。
一例を上げれば、リアの伸び減衰の強弱で軽快感は大きく変わってきます。その軽快感はどこから生まれる(感じる)のか、軽さを出すならば、なぜ軽くする必要があるのかや、逆に重さを演出するなら、何の必要がありそのようにするのかを大事にします。ですから、サーキット走行のように速さが第一ではい、街乗りのセットアップには、設定者の志向や世界観が大きく影響します。それは非常に楽しい作業なのですが、考えをしっかり持っていなければ、セットアップの到達点も道程もありません。
今回は車体を預かっての作業ですから、ダンパーの設定から乗り味まで任されているので、難しくもあり責任感を楽しむ仕事でもあります。
ダンパーを設定する際は純正を参考にするのですが、そこから発条定数、自由長、減衰の強さ、ダンパーの形状、予算までお客様に合う物を考えるので、それもまた楽しくもあり、神経を使う点です。
車体の写真はお客様の了解を頂き次第、載せることにします。
2レース走行後の分解
今年は56レーシング様のほかに、数台のレースサポート業務を行っています。
56は車体造りからダンパーメンテ、セットアップ、車体メンテナンスなどの一部も手伝わせて頂いていますが、ほかに千葉県松戸市のドッグファイトレーシング様も、FGの開発で協力頂いています。
そのドッグファイトレーシングの折川様のFGが仕様変更で戻ってきました。筑波選手権と、全日本の2レースに練習走行を行っただけなので、オイルの劣化は少なくガスの混入もありませんでした。
以前紹介したブラダを用いるNSF250Rのリアダンパーと比較し、FGはフリーピストンを採用しているので、上記の点は非常に有利です。フリクションの問題はありますが、引き換えにしなければいけない点を考慮すれば、フリーピストン型のほうが総合点は高いと思いますが、部品点数、組み込み作業、位置決めなど量産には不向きな面もあります。決勝と予選でエア抜きとオイル交換を行うのであれば、ブラダも価値がありそうですが、普通はそのようなことは出来ないので、今年は56レーシング様のNSF250Rで試してみようかとも考えています。
オイル開発、NSF250Rのサスペンション
今年は長年の付き合いのある広島高潤の飯盛様が、56Racingをサポートして頂いているので、色々な話し合いの中からフォークオイルの新作を合同で作る事となり、その第一弾でNSF250Rのサスペンションをオーバーホール時に使用致しました。
作業を終え手で押した瞬間に何か違うと感じ、その感触を開発者の飯盛さんに伝えたところ、私の感想と合致したので安心しました。今年はこのオイルの開発を行い、広島高潤様との間で合意に達した段階で販売を開始いたします。
広島高潤様でも一般販売する品なので、皆様も購入して頂ける通常の商品です。価格は現在のオイル(定価2,700)よりもかなり高額になりますが、価格以上の出来だと感じました。
NSFのオーバーホール時期についてですが、リアはブラダによるガス保持を採用しているので、かなり早期のメンテナンスが必要になりそうです。フリーピストン型では気体との接触面がOリングの面だけなのに対し、ブラダは全面がゴムなので透過する量が圧倒的に多くなります。
今後は中野監督と相談し、レース毎か、特スポ終わりの予選前に現場でオイル交換が必要だと感じました。今回は前後ダンパー共に、消耗品はすべて交換しました。ある程度の期間でシムなども交換対象になると思います。